<J1:浦和3-1東京>◇第2節◇14日◇埼玉

 浦和が「フィンケ・マジック」でV奪回への再スタートを切った。ホーム開幕戦で東京に3-1で快勝し、フォルカー・フィンケ監督(60)にとって就任後初白星となる今季公式戦初勝利を挙げた。前節鹿島戦から先発3人の布陣を入れ替え、試合終盤にはルーキーMF山田直をトップ下に、DF堀之内をボランチに投入する変幻自在の采配が奏功。人もボールも連動する新スタイルのサッカー定着へ手応えをつかんだ。

 母国ドイツより遠く異国の地で踏みしめた、大きな1歩だった。フィンケ監督は、勝利の余韻が漂う、赤く染まった観客席を見渡しながら「さあ、行くぞ」と選手たちを再びピッチへ促した。試合直後に試合会場で、異例のクールダウン。就任間もない指揮官を信じて戦い、今季初勝利を手にした選手たちの姿をもう1度、地元サポーターに披露したかった。

 「日本での初めての勝ち点3。どこのリーグであろうと、どんな相手であろうと、勝ち点3の価値は(大きいものであることに)変わりありません」。7日の鹿島戦で0-2完敗。新体制で臨むシーズン、序盤に黒星を重ねればチームが崩壊しかねない。事前のテストが不足していることを覚悟しつつ、フィンケ監督は開幕2戦目で、動いた。

  (1) 先発入れ替え

 高原に代えてエジミウソンを先発起用。新潟時代から通算7戦6発の「東京キラー」ぶりを発揮し、後半3分に勝ち越し点を決めた。右のサイドバックに山田暢、開幕戦で右に入っていた細貝を左に配置し、東京長友ら相手の両翼との脚力勝負を制した。

  (2) カンフル剤

 後半33分には、ボランチの新人MF山田直を「中盤が間延びしている。攻守両面で空いたスペースを埋めなさい」と指示してトップ下で投入。5分後、山田直はポンテの3点目を演出した。同41分にはDF堀之内を守備固めで起用。阿部、鈴木との3ボランチで失点を許さなかった。

 浦和は昨季、この日と同じリーグ第2節で連敗し、オジェック監督を解任した。J屈指の戦力を持ちながら選手と指導者の間でサッカー観を共有できず、6年ぶりの無冠。だが、今季は違う。山田暢は「新鮮だし、面白い。自分がもし指導者になったらと考えても、フィンケさんの理論が分かる」という。状況に応じて役割が変わるスタイルにも「後から入ってくる選手が、きちんと監督の指示を受けているのが伝わってくる」と戸惑いはなかった。

 都内の新居には、50型の大型テレビを運び入れて日夜、研究を重ねるフィンケ監督。対戦相手の分析はもちろん、浦和の選手はユースや前所属時代のプレーまで頭にたたき込んである。「ピッチ上で学習能力を高めつつ、選手が自ら考えることを忘れてはならない」。リスクを恐れない大勝負で手にした、08年8月23日磐田戦以来、リーグ戦6試合ぶりのホーム戦白星。フィンケ流のDNAを力に、赤い悪魔が復活への第1歩を記した。【山下健二郎】