<J2:山形2-1甲府>◇第4節◇20日◇NDスタ

 スーパールーキーが決めたぜ!

 山形は今季3連勝していた甲府に逆転勝ちし、開幕戦黒星後3連勝。1-1の後半39分、新人MF宮阪政樹(22)がFKを直接沈め、うれしいプロ初ゴールが決勝点になった。この日は東京から女手一つで育ててくれた母奈苗江さんを招待しており、最高のプレゼントを贈った。

 はしゃいだ。何よりうれしかった。いつもは冷静な宮阪が、FW中島に飛び付き、その勢いのままゴール裏へ。張り倒され、仲間にもみくちゃにされても笑顔が消えることはなかった。

 決勝弾の裏には、ベテランとルーキーのトリックプレーがあった。後半39分、ゴールまで約20メートルの絶好の位置でFKを獲得。角度はほぼ正面。FKの名手・石川の「十八番」とも言えるシチュエーション。壁の位置、枚数を確認し、ボールを置き直す。石川がいつもの儀式を淡々とこなす。助走をつけるために1歩2歩と下がった。

 その瞬間だった。左側にポツンと控えていた宮阪が猛然とダッシュ。GK荻の反応が遅れる。その上を、緩やかに弧を描いたボールが越え、音もなくネットを揺らした。「(石川)タツさんが『調子いいから蹴っていいよ。下がるときを狙って』と言ってくれた。壁の上をいけば入ると思った」。難しそうな演出にサラリと応えてみせた。

 母奈苗江さんに贈ったプロ初ゴール。幼少期に両親が離婚。女手一つで安くはない東京のユースにも通わせてくれた。サッカーをする上で、不自由に感じたことは何一つなかった。好きなことに没頭すればするほど、母の苦労も理解できた。だから「高卒でダメならプロは諦めるつもりだった」。それでも母は大学でのプレーを勧めてくれた。

 「やっぱりプロになりたい気持ちはずっとあった。感謝してます」。Jリーガーになることを後押ししてくれた奈苗江さんの目の前で、最高の仕事をやってのけた。「スタンドを見たら涙ぐんでいるように見えた。これからも恩返しできるように」。開幕スタメン。プロ初得点。有言実行の新人は、とどまることなく成長していく。【湯浅知彦】

 ◆宮阪政樹(みやさか・まさき)1989年(平元)7月15日生まれ。東京・練馬区出身。田柄二小3年から「田柄サッカークラブ」でサッカーを始める。中学、高校時代はFC東京U-15、U-18に所属。その後、明大に進学。一昨年の全日本大学サッカー選手権では51年ぶりの優勝に貢献した。今季からJ2山形に新加入。J通算4試合1得点。ポジションはMF(ボランチ)。家族は母、姉。右利き。168センチ、68キロ。血液型B。