イラン代表が国歌を歌った。ウェールズとのグループリーグ第2戦の試合前セレモニーで、国歌の演奏が始まると、選手たちはわずかに口を開き、国歌を歌っているように見えた。第1戦のイングランド戦では国歌を歌わず、反ヒジャーブ運動への連帯を示し、政府への抗議の行動をとったが、この日は違った。

この試合の前には、イランのファルス通信とタスムニ通信が、国内のサッカー元代表ヴォリア・ガフーリが反政府プロパガンダの罪で逮捕されたと報じた。

逮捕されたのは今月2日だが、W杯試合直前の報道は、明らかに国歌を歌わないことで抗議を続けるイラン代表への圧力ともとれる。当局の“警告”を感じたのかイラン代表の選手たちは、ボソボソと国歌を歌っているように見えた。

反ヒジャーブ運動は、9月に女性が髪を覆うヒジャーブ規則に違反したとしてマフサ・アミニさんが道徳警察に拘留された後に亡くなった事件後、イラン国内では反発が広がったことに起因する。国民的な広がりを見せ、サッカーを始め、バスケットボール、バレーボール、ビーチサッカーなどスポーツ界でも抗議の声が続々と上がっている。

逮捕されたガフーリは、そのキャリアを通じてイラン当局を率直に批判。男子サッカーの試合での女性観戦禁止や、欧米の制裁を招いたイランの外交政策にも異を唱えてきた。

抗議行動を監視してきた団体によると、騒乱開始以来、イランでは少なくとも442人の抗議者が死亡し、1万8000人以上が拘束されたという。W杯での抗議活動で帰国後のイラン代表選手たちを心配する声も上がっていた。