新型コロナウイルス対策として厳しい行動制限「ゼロコロナ」政策を続ける中国で、国営中国中央テレビがサッカーワールドカップ(W杯)カタール大会の中継でマスクなしで観戦するファンの姿を意図的にカットして放送していることが分かった。

英サン紙によると、27日の日本対コスタリカ戦で、ノーマスクで旗を振る観客のクローズアップを選手や関係者、またはスタジアムの画像に差し替えて放送していたという。

また、26日のチュニジア対オーストリアの試合では選手とサイドラインの関係者にカメラが向けられ、観客の映像が極端に少なかったほか、米国対ウェールズ戦では観客が不自然にぼかされていたことも指摘している。

同局の映像は他の放送局と比較すると観客の顔が識別できない遠目からの映像が多く、クローズアップで観客の盛り上がりが分かるシーンは意図的に映さないようにしている可能性があるという。中国版TikTok(ティックトック)「抖音」などで中継された映像と比較してもそれは明らかで、ロックダウン下でSNSをみたファンからは怒りの声が上がっているという。

中国では現在、首都北京を含む主要都市で新型コロナの感染者が増加していることを受け、数千万人がロックダウンの影響下にあり、お祭り騒ぎのW杯との温度差が大きすぎることから国内で不満が噴出していると英BBCも伝えている。世界の主要国のほとんどがすでに行動規制を完全に撤廃する中、中国だけがゼロコロナ政策を続けている。

そのため、スタジアムに何万人もの観客が社会的距離なしにノーマスクで集まって応戦する様子は、自宅軟禁を強いられている中国人にとっては衝撃的であり、世界から取り残されていると「格差」を嘆く投稿がSNSにはあふれている。

北京市中心部では27日夜から28日未明にかけ、「ゼロコロナ」政策に反対する千人規模の抗議デモが起きており、習近平国家主席の退陣を求める声が高まっている。(ロサンゼルス=千歳香奈子通信員)