ワールドカップ(W杯)カタール大会が終了した。森保ジャパンの躍進もあって「ドーハの歓喜」「三笘の1ミリ」など数々の名場面があった。

そこで中東初開催となった歴史的な大会を、12のトピックとともに振り返る。

 

◆1位「三笘の1ミリ」

勝てば16強進出が決まる1次リーグ第3戦スペイン戦。日本は1-1の後半6分、三笘がゴール左でピッチから出かかったボールを左足で折り返し、これを田中が押し込んだ。ボールはラインを割っていたようにも見えたが「1ミリでもかかっていたらいい」と三笘。VARによる約2分半の確認で得点が認められた。大会公式球にはチップが内蔵されており、判定に多くの最新技術が活用された。

 

◆2位「『ドーハの歓喜』浅野弾」

W杯4度優勝を誇るドイツとの初戦。日本は1-1の同点とし、勢いづいて迎えた後半38分だった。浅野がオフサイドラインぎりぎりで抜けだし、自陣から板倉が蹴ったFKを右足で絶妙なトラップ。持ち味のスピードが生きる最高のタッチでペナルティーエリア内に入ると、相手に寄せられながらも突進。右足で放ったシュートはGKノイアーの左肩の上を抜き、「ドーハの歓喜」を呼び込んだ。

 

◆3位「メッシ悲願達成」

サッカー界の宝がついに、神になった。アルゼンチンの不動のエース、メッシは2ゴールを決め、優勝の立役者へ。大会通じて7得点を挙げ、最優秀選手に送られる「ゴールデンボール賞」にも輝いた。5度目の挑戦で「最後のW杯」と公言し臨んだ大舞台。華々しいタイトルの数々に唯一足りなかった、W杯の栄冠が加わった。1986年メキシコ大会で世界一を手にし、2年前に亡くなった「神の子」マラドーナさんに捧げる勝利ともなった。

 

◆4位「長いロスタイム」

1次リーグのイングランド-イラン戦は長いロスタイムが話題になった。前半にイランのGKベイランバンドが味方と激しく接触して鼻から出血し、治療に時間を要すなどで14分の追加。後半も10分と掲示されたロスタイムがさらに延長され、VARの確認によって認められたPKを後半ロスタイム13分にイランのタレミが決めた。「後半58分」の得点は90分試合では史上最も遅いゴールとなった。

 

◆5位「PK強しクロアチア」

PKがクローズアップされた大会でもあった。GKのPKセーブ率が前回大会と比べてアップ。特にクロアチアのGKリバコビッチは準々決勝のブラジルとのPK戦で1本止め、日本との決勝トーナメント1回戦での3本を合わせて通算4本のPKストップでW杯最多記録に並んだ。4年前は控えだった27歳の新守護神の活躍もあって、クロアチアはW杯のPK戦に無傷の4連勝で4強入りした。

 

◆6位「ネイマール伝説ゴールも…」

ブラジルの至宝、ネイマールが準々決勝のクロアチア戦で後世に残るゴールを決めた。延長前半16分、中央で味方とワンタッチでパスをつなぎ、ペナルティーエリア奥へ切り込むと、ドリブルでGKをかわしてゴール。王様ペレの代表通算77得点に並んだ。しかしPK戦の末に敗れ、呼吸器感染症で病床にいる82歳のペレに優勝をささげることはできなかった。3度目の大舞台でもまた涙をのんだ。

 

◆番外編「エムバペ決勝ハットに得点王。でも頂点に届かず…」

フランスFWエムバペが3ゴールの活躍で今大会得点数を「8」に伸ばし、メッシを抑えて得点王に輝いた。W杯決勝でのハットトリックは、ハースト(イングランド)が66年大会・西ドイツ戦で達成して以来、56年ぶり2人目。試合はPK戦の末に敗れ、準優勝に終わったが、エムバペは歴史に名を刻んでスタジアムを後にした。

 

◆7位「ロナウド『夢は終わった』」

ポルトガルFWロナウドが1次リーグのガーナ戦でPKから得点し、史上初の5大会連続ゴールを記録した。だが、その後に監督への反発もあり決勝トーナメント2試合は先発から外れ無得点。準々決勝で敗れた後は涙を流した。インスタグラムで「多くのことが書かれ、多くのことが推測された。でも私のポルトガルへの献身は一瞬たりとも変わらなかった」と弁明し、「夢は終わった」と代表引退も示唆した。

 

◆8位「モロッコ大躍進」

モロッコが過去最高だった16強の壁を乗り越え、アフリカ勢初となる4強まで進出した。ベルギー、スペイン、ポルトガルと強豪国を軒並み撃破。ポルトガルとの準々決勝では、FWネシリがGKの上からたたきつける豪快なヘディングシュートを決めて世界中を驚かせた。3位決定戦ではクロアチアに惜敗したが、アフリカのみならず、アラブ世界の代表としてその健闘ぶりは称賛に値するものだった。

 

◆9位「バイシクルシュート!!」

ブラジルFWリシャルリソンが「これぞW杯」といわんばかりのスーパーゴールを決めた。1次リーグ初戦セルビア戦の後半28分、ビニシウスの左からの折り返しを、ゴールに背を向けた状態で左足トラップ。宙に浮いたボールを強烈な右足バイシクルシュートでゴール左へ突き刺した。この日2得点でチームを勝利に導くと「子供のころの夢がかなった。フットボールよ、ありがとう」とツイッターに書き込んだ。

 

◆10位「初の女性主審」

女性審判が裁いた歴史的なW杯となった。日本の山下良美審判員も大会に参加し、第4審判として6試合を担当。「やるべきことを精いっぱいやった。これだけ心を動かせるサッカーに、より魅了された」。また、1次リーグのドイツ対コスタリカ戦はフランスのフラパル審判員が大会史上初めて主審を務め、副審2人も女性。山下審判員は「心からうれしかったし、可能性が広がったのを目の当たりにした」と喜んだ。

 

◆番外編「『最もホット』なサポーター

日本とも戦ったクロアチアのスタンドで、ひときわ目立っていたのが「最もホット」なサポーター、イワナ・ノールさん(30)。クロアチアの快進撃とともに、現地で応援するノールさんの姿に注目の的となり、インスタグラムのフォロワーは大会中に200万人以上も増えて320万人超となった。今大会はさまざまなインフルエンサーがW杯の魅力に乗じ、世界中に話題を振りまいた。