【インスブルック(オーストリア)11日】日本代表MF香川真司(29=ドルトムント)が、先発奪回のラストチャンスをつかむ。ワールドカップ(W杯)ロシア大会(14日開幕)前、最後の国際親善試合パラグアイ戦に向けて会場のチボリ・シュタディオンで非公開調整。約8カ月ぶりの代表スタメン濃厚な一戦へ「もう(批判も)言われ切った」と吹っ切れ、本田との定位置争いにも勝利にも、どん底から浮上する。

 香川の頭は整理されていた。非公開練習を前に「どこでボールを受けたら、チームも個人も輝くか常に意識している。前を向いて仕掛ける時間帯、入り込む時間帯、スピードを上げる時間帯」。いまだ西野ジャパンに得点が生まれていない中、より高い位置でのプレーパターンを思い描いた。

 スイス戦翌日の9日にあった半日間のオフは空港から宿舎へ直行。食事に出た選手、湖などを散策した選手もいた中、ホテルにこもって心身を整えた。W杯前のラストマッチで弾みをつけるためだ。西野監督は、スイス戦でサブ組だった選手のパラグアイ戦でのスタメン起用を明言。香川が先発すれば、代表では昨年10月のニュージーランド戦以来8カ月ぶり、クラブでも4カ月前のケルン戦が最後だ。ラストチャンスのパラグアイ戦へ「90分間やり切りたい」と燃える。状態が未知数と疑われたままW杯を迎えるわけにいかない。

 8日スイス戦では、先発で結果を残せなかった本田が「真司にポジションを奪われる」と、危機感を口にした。一方、香川のスタンスは変わらない。「(本田)圭佑君とはプレースタイルが違うし、お互いの良さがある。自分が出れば危険なエリアに入っていく動きをしたいし、個人のストロングがW杯には必要」。先発から遠ざかり、チームも5年ぶりの国際Aマッチ3連敗中。背番号10に対する批判も肌で感じている。が、もう吹っ切れた。「チームも個人も(批判は)言われ切ったと思っている。失うものはない。あとは上に行くだけ」。ここからは、地に落ちた反動で急上昇する。

 スイス戦の映像も見直し「サコ(大迫)が孤立していた」と、生命線の守備の課題も抽出した。10日の非公開練習では、1トップで先発する可能性が高い岡崎と奔走するイメージを膨らませ「僕と岡ちゃん(岡崎)がプレスのスイッチを入れたい」と言った。W杯初戦コロンビア戦(19日)まで1週間。日本の10番が攻守両面で完全復活しなければ未来はない。【木下淳】