人口約33万人の小さな島国がいよいよ、世界のひのき舞台に初登場する。大西洋の北緯65度に浮かぶ、火山とオーロラで有名なアイスランドが16日午後4時(日本時間午後10時)、前回準優勝のアルゼンチンに挑む。

 サッカーの国際舞台で実績はなかったが、初出場した2016年の欧州選手権でイングランドを破るなどして8強入り。ワールドカップ(W杯)欧州予選I組は首位で突破し、悲願にこぎつけた。ハルグリムソン監督は「W杯出場は誇りに思う。全ての関係者が努力してくれたおかげだ」と感謝の気持ちを込める。

 躍進を支えるのは競技施設とコーチングの充実だ。首都レイキャビク郊外にある1部リーグの強豪ハフナルフィヨドゥルの本拠地。屋内練習場が05年に建設された。ティラン・コーチは「この施設があるおかげで、冬でも普通に練習ができる」と目を細める。火山国の特徴を生かし、施設の地下には豊富な温水がパイプ内を通る。アイスランド・サッカー協会によると、こうした施設は国内に13カ所あり、厳冬期での練習が可能になった。

 各クラブのコーチには欧州サッカー連盟(UEFA)公認の資格取得が義務付けられた。その結果、有資格者は900人以上となり5、6歳といった幼少期からの育成に当たる。恩恵を受けたのが、司令塔のG・シグルドソンら現在の代表だ。

 サポーターの応援も注目の的だ。ドラムと手拍子、雄たけびを繰り返し、最後は嵐のようなクライマックスを迎える「バイキング・クラップ」。16年に披露し、一躍有名になった。ドラムをたたく通称、ジョーイ・ドラマー氏は「応援の歌詞もなく、必要なのは手をたたくことだけ。本当にシンプルだから、誰でも参加できる。それが成功の秘訣(ひけつ)だと思う」と言う。

 ロシアには3、4000人のファンが応援に駆け付けると見込まれる。先導する予定のドラマー氏は「2年前は素晴らしい思い出をつくった。今度も記憶に残ることができればうれしい」と再度の旋風を期待している。