ウルグアイがFWルイス・スアレス(31)のゴールでサウジアラビアを1-0と退け、2連勝で決勝トーナメント進出を決めた。スアレスは節目の代表通算100試合目だった。過去2回のワールドカップ(W杯)では退場処分、大会追放と悪童ぶりばかりが目立ったが、今回は優等生に変身? ビデオ判定(ビデオ・アシスタント・レフェリー=VAR)の“監視”の下、猫をかぶっているのか、本当に大人の対応を身につけたのか…。やっぱり目が離せない。

 猟犬のようなゴールへの嗅覚は健在だった。前半23分、左CKに味方2人と相手GKが競り合うが、誰も触れられない。それを見透かしたように、スアレスはファーサイドで待ち受け、左足を合わせた。母国を3大会連続の16強に導く決勝弾。自身も3大会連続ゴールとなるW杯通算6点目で、記念の代表100戦目を飾った。

 CKを受ける直前、相手のジャサムに抱えられるように密着マークされた。だが、力任せに突き飛ばしたりしない、スルリと体を入れ替えてかわし、フリーになった。VARの目が光る中、クレバーな反応だ。

 スアレスといえば、過去2大会はゴールより愚行が注目された。10年大会準々決勝ガーナ戦では故意のハンドで相手のゴールを阻止して退場処分に。14年1次リーグのイタリア戦では相手DFにかみつき、大会追放の上に4カ月の活動停止を命じられた。

 ところが、今回はちょっと違う。ゴール後はおなかをふくらませるポーズを3度し、試合後に「また父親になれるのが楽しみ」と、夫人が第3子を妊娠したことを明かして、パパの顔をアピールした。前半42分に負傷者が出てプレーが中断すると、やり合っていた相手の肩をたたき、なだめる大人の対応。タバレス監督には「彼はやさしい人間なんだ」とも言わしめた。

 VAR導入で、86年大会の「マラドーナの神の手」など誤審が消えるという。無用なラフプレーが減るともいわれている。スアレスも牙を抜かれて、優等生に変身したのだろうか。逆に言えばW杯から“迷場面”や珍プレーもなくなってしまうということか。だが、ウルグアイ国民やスアレスのファンは、その破天荒さとFWとしての才能の二面性が好きなのだ。

 シュート13本で1得点、ボール保持率は47%と下回り、決して満足できる内容ではなかった。それでもスアレスは「最も大事なのは結果」と現実的コメント。これが仮の姿か、本物か、お騒がせ男の本能が爆発する日はあるのか、「勝負どころ」はまだ先のようだ。