ワールドカップ(W杯)ロシア大会の公式球「テルスター18」をスポーツ・バイオメカニクス分野を専門に研究する筑波大の浅井武教授(61)が分析した。「巧打者」に優位という一面が浮かび上がり、10年南アフリカ大会で直接FKを決めた日本代表MF本田圭佑(32=パチューカ)にもプラスに働きそうだ。

 ボールは友達-。サッカーでよく聞かれるこの言葉。今大会の公式球テルスター18の特性も理解して“本当の友達”になれば、ポーランド戦も怖くない。ボール分析のスペシャリストである筑波大の浅井教授は風洞実験で得た、特徴を解説した。

 「GKからしたら少し読みづらい。昔のジャブラニに比べると曲げやすく、技術があればピンポイントで狙いやすい。速いボールになりやすくて、変化も正確にかけやすい。枠にも飛ばしやすい」

 南アフリカ大会の公式球「ジャブラニ」、ブラジル大会の「ブラズーカ」。表面がツルツルしていたジャブラニに比べると、ブラズーカからは表面に粗さが出るようになった。同じ中速領域のボール速度で比べると、ジャブラニよりもブラズーカやテルスター18の方が空気抵抗が小さく、スピードが出やすい。一方で安定性も高まった。パネル数がジャブラニの8枚から6枚に減少したことで正確性が増した。GK川島も今大会の公式球について「しっかり当たった時に伸びてくる。カーブがかかりながら伸びてくる感覚」と話しており、キッカーの技術力が問われることとなる。

 ポーランド戦でカギを握るのは、やはりセットプレー。思い出すのは8年前、1勝1敗で迎えた1次リーグ第3戦のデンマーク戦で本田とMF遠藤が決めた直接FKだ。テルスター18は安定性が増した分、当時のジャブラニほどブレ球になることは少ない。だが、本田の正確なキックと操作しやすい今回のボールは親和性が高い。コースを狙った直接FK再現弾が決まれば、決勝トーナメントまでの道筋を描くことができる。

 本田自身、第1戦のコロンビア戦直後にはまだ公式球に慣れておらず、違和感も口にしていた。それも3戦目となれば解決に近づく。もちろん、テルスター18はもろ刃の剣で相手エースFWレバンドフスキのミドルシュートやFKも警戒しなければいけない。「強打者」にも優位な特性を挙げた上で、浅井教授は「レバンドフスキは、インパクトの瞬間の強さが世界でもずばぬけている。速く強いシュートが蹴れる。日本からしたら技術の高い選手に扱われるといいキックをされる可能性がある」と指摘した。

 ボールを味方に付けるのはどちらか。背番号4の左足から繰り出される強烈シュートに注目だ。【小杉舞】

 ◆直接FKによる得点 10年大会は5点、14年大会は3点(各64試合)だった。今大会は1次リーグ途中の第10日、29試合消化時点で4点が決まっている。