98年フランス大会以来20年ぶり2度目の優勝を狙うフランスと、86年メキシコ大会以来32年ぶり3度目の頂点に挑むアルゼンチン。今大会初の優勝経験国同士の対決となった最初の決勝トーナメントの一戦は、4―3でフランスに軍配が上がった。

 最初の決定機はフランス。前半9分、正面右で得たFKをFWグリーズマンが左足で狙う。これは惜しくもクロスバーにはじかれたが、観衆が度肝を抜かれたのは、その2分後だった。

 前半11分、19歳のFWエムバペがとてつもない快足を見せる。自陣でアルゼンチンのパスをカットすると、ぐんぐん前に。抜くというよりも置き去りにして駆け上がり、最後は前につついてヨーイドン。ボールに追いつけないアルゼンチンDFロホがたまらず倒してしまって、フランスにPKが与えられた。これをFWグリーズマンが落ち着いて決めて、前半13分にフランスが先制した。

 1次リーグのペルー戦で、フランス代表史上最年少ゴールを決めたエムバペの「足」は、まだ止まらない。前半19分には味方のクリアボールに再び抜け出す。今度はアルゼンチンDFタリアフィコがたまらず倒してしまったが、これは幸いにしてペナルティーエリアのわずかに外。このFKはMFポグバが大きく外して、アルゼンチンは事なきを得た。

 FWメッシを3トップの中央に据えたアルゼンチンだが、絶対的エースはボールを受けに下がってばかり。前半37分にはペナルティーエリア内でフランスDFと足が絡んで倒れたが、笛はなし。攻撃がなかなか機能しない中で、流れが変わったのはたった一振りからだった。前半41分、左からのパスが中央のMFディマリアへ送られると、なぜかマークが誰もいない。落ち着いて2タッチすると、正面約27メートルの距離から左足を振り抜いた。鮮やかな曲線を描いてボールは右のサイドネットへ。同点に追いつき、会場の大半を埋めたアルゼンチンサポーターが狂喜乱舞した。全てが振り出しに戻って後半に突入した。

 1―1で迎えた後半の出だし。勢いは追いついたアルゼンチンにあった。3分、左CKのクリアボールをメッシが拾う。反転して左足でシュートを放つと、味方のDFメルカドの左足に当たってコースが変わり、GKの逆を突くようにしてゴールへと吸い込まれた。メッシの今大会初アシストで2―1と逆転した。

 だが、激しい点の取り合いは、まだ終わらない。今度はフランスがみせた。後半12分、左からのクロスが抜けてくる。詰めたのは右サイドバックのDFパバール。体を傾けながら、右足でたたきつけるように放ったボレーシュート。強烈なバックスピンがかかったボールは浮き上がるような軌道を見せながら左のサイドネットに突き進んだ。22歳の代表初ゴール。

 そして7分後にスコアを動かしたのは、再びフランスだった。左クロスからのゴール前の混戦をエムバペが拾って一気に縦に抜けると、左足を一閃(いっせん)。10番を背負うフランスの次世代エースの今大会2得点目で、またしてもフランスが勝ち越した。

 時代の先頭を走ってきた31歳のメッシと新世代の象徴、19歳のエムバペ。「10番対決」が注目された試合だった。そこで鮮烈な印象を残したのは、若き血。わずか4分後の後半23分にはGKから始まった攻撃で一気に駆け上がり、今大会2点目を決めた。