80分は守り倒せ! 残り10分で勝負、いや延長覚悟で消耗戦に挑め! 日刊スポーツ評論家の宮沢ミシェル氏(54)が、難攻不落に思えるベルギー対策の守備を考え抜いた。ポイントは、中央のFWルカクの背後に控えるE・アザールとメルテンスの両FWをいかに抑えるか。3段構え、4段構えの人海戦術しかないと結論を出した。単独で突破する技量を持ち、縦横左右と幅広くピッチを使う2人を止めれば、ルカクは孤立するとみた。

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 ベルギーは、近い将来、日本代表が目指すべきサッカーを展開するチームだ。グラウンドを幅広く使って、ドリブラーあり、ロングフィードあり、ワンツーパスも脅威と、とても攻撃の幅が広い。しかもパスとシュートの精度が高く、ギアが入った時の連係は見事としか言いようがない。

 イメージとして、主な攻めはJリーグを連覇した時のサンフレッチェ広島のサッカーを大幅にグレードアップしたバージョンだ。1・5列目の両シャドー(E・アザールとメルテンス)がワイドに開き、崩しにかかる。広島は2列目の選手をサイドに張らせて突破口を見いだしたが、この2人は、それだけではない。中にもいるし、ルカクの前にも顔を出す。行き詰まった時は、ボランチの位置まで下がって、リズムを作る。

 ベルギーの得点の9割はこの2人によって作られる。ではどう対抗すべきか。中盤5人+4バックが、どう連係すれば彼らを抑えられるか。まず低い位置にいる場合、トップ下の選手(香川)が、彼らを気分良くプレーさせないため、体をぶつけてつつく。突破されたら、近くにいるボランチが厳しくチェックする。当然、トップ下の選手がついていって挟む。それでも突破されることを想定して、DFの一角がさらに突っ込む準備をしておく。3段構えなら、何とか止められるだろう。

 サイドに開いた時はどうか? 日本はサイドのMFがまずぶつかって、ボランチがチェックして、サイドバックも進むコースを消しながら突っ込む用意をしておく。この時、当然相手のウイングバックも縦に走ってくるから、センターバックもそのサイドに加わる準備が必要だ。これは4段構えとなる。ルカクより前に走り込んできたら、マンマークのつもりでボランチの1人が責任を持ってサイドまでマークを外さない。

 これで80分以上耐えられれば、日本に勝機アリ。私は会場のロストフ・アリーナに、ブラジル-スイス戦など3回行っている。ロストフは非常に暑く、昼間は太陽が痛いと感じる。最高気温が40度にまで上がることもある。この暑さを味方につけたい。相手の体力消耗を待って、攻め上がりが好きな相手両サイドの裏を突いて、何とか1点取ってほしい。今回はやむなく、守備的戦術を取る必要があるが、近い将来、日本が今のベルギーのようなサッカーで世界に対抗してほしいと切に思う。(日刊スポーツ評論家)