就任2カ月の西野監督が頼ったのは選手の経験だった。10年南アフリカ大会の16強を知る選手が5人、14年ブラジル大会で悔しさを味わった選手が11人。そこに今回は数人ずつプラチナ世代とリオ世代が加わったものの、開幕時の平均年齢28・2歳は最高齢だった。

 初の8強という夢の続きは追いたいが、22年カタール大会では確実にメンバーが入れ替わる。既に主将の長谷部、長年エースだった本田らが代表引退を表明。世代交代が進む中、今回1人も出番がなかったリオ世代と、選出すらなかった東京世代をどう伸ばすのか。

 ベルギー戦の死闘から一夜明けた3日、提言したのは香川だ。一考を求めたのが招集のメリハリ。「ワールドカップ(W杯)まで4年間。常に(国際Aマッチで)日本へ帰国して試合する難しさを感じていたのは事実。海外組は移動でコンディションを崩したり、メンバーから外されることもある」。最低でも片道12時間かかる欧州との往復、代表でクラブから離脱している間に序列が下がるケースは多い。それでハイレベルの日常のリーグ戦で出番を失っては、成長を考えた時に本末転倒だろう。

 もちろん代表戦の興行の重要性も分かった上で、さらに踏み込んだ。「最終予選は別だけど(格下相手の)親善試合や2次予選は、国内組や若手で臨んでもいいのでは。代表の底上げにもつながる。協会は未来を見据えてプランニングしてほしい」と切実に提案した。例えば、前回王者ドイツは17年のコンフェデ杯で常連を休ませ、若手中心で戦った。今大会こそ結果は出なかったが、それくらいしなければ、長谷部、本田ら国際Aマッチ出場100試合クラスの選手との空洞が広がったままになる。

 中堅、今回W杯を初体験した柴崎、昌子ら20代半ばの選手はさらに経験を積む必要がある。柴崎は「経験、知識、感覚が未熟だった」と言い「欧州CLに出たい。レベルはW杯と同等か、それ以上。そこに身を投じることが自分には必要」と自覚した。合宿中、本田や吉田は若手に一刻も早い海外移籍を勧め、香川も「より厳しい環境に身を置くことが何よりも大事。基本はクラブ。欧州のトップレベルで戦い続け、得られるものは計り知れない」と同調した。ベルギー戦で痛感したように、とにかく「個」を伸ばすしかない。極端に言えば、チームとして合わせるのは「2カ月」あればいい。ただ、個々がスケールアップしなければ「4年」かけても16強が精いっぱいかもしれない。世代交代を進めるに当たって、取り仕切る日本協会には明確な強化策を示す責任がある。【木下淳】(おわり)