スペイン代表は今日2日(日本時間3日)にリヨンで行われるパリオリンピック(五輪)男子サッカー準々決勝で日本と対戦することになった。

スペインが通算2回目の金メダルを目指す戦いは、準優勝を成し遂げた前回の東京五輪よりも早い21年3月にスタート。その理由は昨夏のU-21欧州選手権がパリ五輪予選を兼ねたためだ。これによりスペインは、パリ五輪出場権を得るまでに2年以上の長い道のりを歩む必要があった。

当時の指揮官は3年前の東京五輪でU-23代表を準優勝、そして先月、欧州選手権でA代表を史上最多4度目の優勝に導いた名将デラフエンテ。パリ五輪を目指して新たに発足されたチームはU-21欧州選手権予選を8戦全勝で終え、本戦出場を決定した。

その後、デラフエンテがA代表監督に就任したことで、22年12月にそれまでU-19代表を指揮していたサンティ・デニアが引き継いだ。同監督はU-17とU-19の欧州選手権で優勝を成し遂げた経験があり、アンダー世代での実績が十分あった。

■年齢制限が1年ずれチーム構成変わる

昨年6月から7月にかけて開催されたU-21欧州選手権は、惜しくも決勝でイングランドに0-1で敗戦。しかし大会上位3チームにパリ五輪出場権が与えられ、スペインは見事その権利を勝ち取った。

U-21欧州選手権予選と決勝で通算14試合12勝1分け1敗という好成績を残したスペインだが、大きな問題に直面する。それは今回に限ったことではないが、U-21欧州選手権とパリ五輪の年齢制限が1年ずれていることだ。前者が2000年1月1日以降、後者が2001年1月1以降生まれを対象としていることで、U-21欧州選手権準優勝メンバー23人中、9人しかパリ五輪の参加資格がなかった。

よく知る選手の多くを呼べず、新たなメンバー編成を余儀なくされたサンティ・デニア監督は、最終的にU-21欧州選手権準優勝メンバーから8人を招集した(バックアップメンバーを含めると9人)。

これにはオーバーエイジ枠で、MFセルヒオ・ゴメス(レアル・ソシエダード/来月24歳)、DFミランダ(ベティス/24歳)、FWアベル・ルイス(ジローナ/24歳)が含まれた。この3人は監督が17年にアンダー世代のスペイン代表を率い始めた時からずっと信頼を寄せてきた選手たちで、チームの骨格を成す。また、ミランダは今回も招集されたDFエリック・ガルシア(バルセロナ)とともに、3年前の東京五輪メンバーだった。

先月ヨーロッパ王者に輝いた欧州選手権からは、MFバエナ(ビリャレアル/U-21欧州選手権優勝メンバー)とMFフェルミン・ロペス(バルセロナ)の2人が招集された。

その他、サンティ・デニア監督に重用されてきたGKアルナウ・テナス(パリ・サンジェルマン/U-21欧州選手権優勝メンバー)、フィジカル面の酷使を避けるため欧州選手権に呼ばれなかった唯一の10代である17歳のDFクバルシ(バルセロナ)、シメオネ監督の下で頭角を現したMFバリオス(アトレチコ・マドリード)、MFアイマール・オロス(オサスナ)、DFプビル(アルメリア)などがこのチームの主力となっている。

これをU-21欧州選手権でレギュラーだったDFパチェコ(Rソシエダード)、昨季のスペインリーグで活躍したDFミゲル・グティエレス(ジローナ)やサム・オモロディオン(Aマドリード)などが支えている。

一方、欧州選手権でレギュラーとして活躍したヤマル(バルセロナ)、ニコ・ウィリアムズ(ビルバオ)、ペドリ(バルセロナ/※ドイツ戦で負傷)、長期離脱中のガビ(バルセロナ)といったスペイン代表の将来を嘱望される世界屈指のタレントは入っていない。

■1次リーグでエジプトに敗れる失態

大会開幕前、ブックメーカー会社のオッズでフランスに次ぐ優勝候補の2番手と目されていたスペインは、決定力でやや苦しみながらもウズベキスタン(2-1)、ドミニカ共和国(3-1)を撃破。1試合残して早々に1次リーグ突破を決定した。

これにより、最終節エジプト戦でスタメン10人およびバックアップメンバー4人まで入れ替える大幅なローテーションを実施した。しかし、これが裏目に出てしまい1-2の敗戦。C組を2位通過することになり、3戦全勝でD組首位と絶好調の日本と準々決勝で顔を合わせることになった。

スペイン国内では失態を犯したエジプト戦について、例えばマルカ紙が「サンティ・デニアのローテーションプランが機能せず」、「シエスタ(午睡)の代償を払った」と指摘したように、戦力を大きく落とし、さらに暑い中での午後3時キックオフという昼寝に適した時間帯に満足いくパフォーマンスを発揮できなかったことへの批判が出ていた。

その一方、首位の座を明け渡すリスクがあるにもかかわらず、主力選手の疲労回復を優先させたことや、ホスト国フランスとの対戦を決勝まで回避したことをポジティブに捉えているメディアもいた。

1次リーグ3試合を見る限り、サンディ・デニス監督のレギュラーはほぼ決定していると言っていい。システムはデラフエンテ時代から3年以上続く4-2-3-1。日本戦のスタメンは、ウズベキスタン戦のGK=アルナウ・テナス、DF=プビル、エリック・ガルシア、クバルシ、ミランダ、ダブルボランチ=バリオス、バエナ、攻撃的MF=アイマール・オロス、フェルミン・ロペス、セルヒオ・ゴメス、FW=アベル・ルイスに限りなく近いものになるだろう。

スペインの1次リーグ3試合の成績は2勝1敗の6得点4失点。A代表のようにポゼッションに優れ、ボール支配率ですべての相手を上回った。シュートを46本(1試合平均15本)打ち、決定率は13%となっている。

また、今大会のスペインの特徴として、さまざまな選手が得点を記録していることが挙げられる。U-21欧州選手権でセルヒオ・ゴメスとともに得点王に輝いたセンターフォワードのアベル・ルイスはここまで無得点だが、それを補う形で6人(プビル、セルヒオ・ゴメス、フェルミン・ロペス、バエナ、ミゲル・グティエレス、サム・オモロディオン)が1ゴールずつ決めている。

■22年11月に日本と対戦して勝利

1次リーグ中は何らかの問題を抱えている選手が何人もいたが、エジプト戦でのローテーションが功を奏し、フォールドプレイヤーは概ね良い状態だ。日本戦を前にしてフィジカル面に問題があるのは、控えGKのジョアン・ガルシア(エスパニョール)とイトゥルベ(AマドリードB)のみである。

一方、スペインの懸念材料として脆弱な守備が挙げられている。不注意なミスを犯して3試合すべてで失点していることは、日本にとって有利に働くかもしれない。サンティ・デニア監督も当然そのことを自覚しており、日本戦に向けて「その点を改善する」と強く訴えていた。練習中に選手とコーチングスタッフとの間で「あんなに失点してはダメだ」と何度も話されていたことは、守備に対する危機感の表れと言えるだろう。

スペインはまた、ここまでボール支配率で相手を上回ってきたが、サンティ・デニア監督がウズベキスタン後にパス回しのスピード不足に不満を持ち、そのクオリティーに納得していない様子だったことも懸念材料となるかもしれない。

スペインは22年11月にセビリア(スペイン)で行われた同世代(※当時はU-21)の親善試合で、大岩監督率いる日本に2-0で勝っていた。しかし今回は状況が違う。日本が自分たちのポテンシャルを存分に発揮し、フランスと並んで1次リーグ全試合でクリーンシートを達成しているため、決して楽な試合にはならないだろう。

実際にサンティ・デニア監督はパリ五輪準々決勝の前日、日本について「素晴らしい守備構造を持ち、非常に機動力に優れた攻撃を仕掛け、クオリティの高い選手を揃えている」と警戒し、勝利するために「ほぼ完璧にやり遂げなければならない」と語っていた。

準決勝進出を懸けた両チームの対戦は間もなくリヨンで開催される。

【高橋智行】(ニッカンスポーツコム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)