「俺を超える選手が出てこないと話にならない」-。日本代表のFW本田圭佑(29=ACミラン)が、若手の奮起を促した。W杯アジア2次予選の2連戦を戦った東南アジア遠征で、ハリルジャパンは15年の全日程を終了した。ミラノへ戻る道中で日刊スポーツの独占取材に応じた第2回は、18年W杯ロシア大会に向け本田が描く「日本の未来図」。

 15年の日本代表ラストゲームを、本田はゴールで締めくくった。17日カンボジア戦。後半ロスタイムに頭で決めた得点は、日本初のW杯予選5戦連発という記録になった。さすがはエース-。そう思う一方で、武藤や原口、南野に宇佐美ら、伸び盛りのはずの若手がなかなか結果に結びついていない寂しさもある。いつまでも「本田頼み」では、いけない。そんな日本の現状を、どう思うのか。

 「ロシア(W杯)の前に、本田圭佑を超える選手が出てこないと話にならないよね。この1、2年やね」

 そこに葛藤や恐怖はないのだろうか。矛盾するが、日本の成長を思えば本田を超える選手は必要。だが、かつてカズや中村俊輔らがそうだったように、超えられることを受け入れるのは容易ではないはずだ。

 「俺を超える選手が日本に出てくるのは、喜ばしいことやね。だから、俺もやるんよ。やるし、やり続ける。俺を脅かせるようなポテンシャルを持った選手は、この代表にはいる。俺だって、しょうもない若手に勝って(試合に出て)も、しゃあないんやからね」

 では、本田の言う能力ある若手が、目に見える形で出現してこないのはなぜか。今年は期待された武藤、宇佐美でさえ代表で先発に定着していない。中盤の軸になるはずのMF柴崎は、今遠征は代表落ちした。

 「それは今、日本が(相手が完全に守備的になる)アジアのサッカーだけをやっているから。アジアで戦う経験のない選手が多いから、見えないように感じるだけ。おそらく来年以降から(本田を脅かす存在が)結果として出てくると思う。もう、時間の問題。だからこれだけドイツとか、いろんな国でレギュラーとして出場し続けている選手がいると思うしね。来年以降(対戦する)相手が強くなるにつれて、見えてくる」

 確かに今年はアジアの戦いを強いられた1年だった。8強で敗退した1月のアジア杯に始まり、W杯予選、8月の東アジア杯。親善試合を含めても、アジア以外の国との対戦は3月27日チュニジア戦(大分)だけだ。協会のマッチメークにも問題があるが、ここまで強豪国との対戦がないと、W杯本戦が想定できない。

 「世界が見えにくい1年ではあったよね。でも、そこから見ていかないといけないよね。何がいけて、何がいけなかったのか。じゃないと、無駄な1年になってしまう。俺は今までと変わらず、ロシアまでの目標を描いているから」

 最後に1つだけ聞きたいことがあった。今遠征中のシンガポール。報道陣の囲み取材で、ACミランで控えに甘んじている現状を「ベンチに座る人の気持ちが分かってきた」と漏らした。強気な発言を繰り返し、はい上がってきた男の弱音とも捉えられる言葉。その真意を尋ねると、本田の“変化”が見えた。

 「自分自身(控えに)慣れてもらっては困ると思っているけれど、慣れてしまうのが人間。慣れる怖さは感じているよね。でも、今までは慣れに対して、逆らい続けてきたけど、それをプラスに変える考え方もあるのではないか、と。そうすることで、限られたミランでの(出場)15分の中で、結果を出す確率が高まるのではないか、とかね」

 少しの沈黙の後、頭を整理するように、ゆっくりと言葉をつないでいく。

 「最近は(人間的に)丸くなってるんかなと、自問自答する時もある。別に、その事態に対して否定はしていない。なぜなら、前進はしているから。俺の野心は、信念は、さらに根強く、太く、成長し続けているから」【取材・構成=益子浩一】