W杯ロシア大会の1次リーグ組み合わせ抽選が1日に行われ、対戦カードが決まった。大会は18年6月14日から始まる。



記念撮影に臨むハリルホジッチ監督(後列左から6人目)、ペケルマン監督(ハリルホジッチ監督の前)ら(撮影・PNP)
記念撮影に臨むハリルホジッチ監督(後列左から6人目)、ペケルマン監督(ハリルホジッチ監督の前)ら(撮影・PNP)

◆A組 ウルグアイ エジプト サウジアラビア ロシア



強力2トップのウルグアイが頭1つ抜ける

<展望> スアレス、カバニの強力2トップを擁するウルグアイは、W杯経験者が多く頭1つ抜けている。初戦で当たるエジプトは、リバプールで好調なサラーが堅守速攻の鍵を握る。ロシアは昨年の欧州選手権、今年のコンフェデレーションズ杯とも1次リーグで敗退。サウジアラビアとの開幕戦は、ランク下位同士の顔合わせとなった。


◎本命 ウルグアイ スアレスとカバニの2大エースが脅威。スアレスは前回大会イタリア戦で、キエリーニの肩にかみついたお騒がせ男。万能型のカバニは昨季パリサンジェルマンで35得点でリーグ得点王とMVPを獲得。この2トップを原動力に上位進出は十分にある。


○対抗 ロシア FIFAランクは32チーム中最下位。予選がなく、ランクを上げにくい事情を差し引いても、実質的には第3ポット程度の実力か。同組の3チームにはラッキーなシード国といった存在になる。歴史は古いがソ連崩壊後3度出たW杯は全て1次リーグ敗退。


▲穴 エジプト 7大会ぶりだが、アフリカ選手権で06年大会から3連覇など力を示している。攻撃の中心はリバプールで活躍しているMFサラー。スピードとテクニックに秀でた世界トップレベルのサイドアタッカー。守備ではウェストブロミッジのDFヘガシが要。


△大穴 サウジアラビア 最終予選の最終戦で日本を下し出場を決めた。ただ、ファンマルウェイク監督がW杯出場決定後に電撃退任。急きょ就任したバウサ監督も解任されるなど大混乱。日本が苦しめられた快足FWのF・ムワラドら個の力はあるが、チームのまとまりは微妙。



◆B組 イラン モロッコ スペイン ポルトガル



ポルトガル、スペインの2強に死角なし

<展望> 初戦でぶつかるポルトガルとスペインの力が抜けている。ポルトガルは世界的なロナルドを擁し、昨年の欧州選手権で初優勝。2大会ぶりの頂点を目指すスペインは大黒柱のイニエスタが引っ張り、イスコら若手の融合も進む。最終予選を無失点で勝ち上がったモロッコ、アジアでは力を示したイランも2強には苦戦。  


◎本命 スペイン 08年、12年欧州選手権連覇、10年W杯優勝など、FIFAランク1位に君臨も、10月は8位となり、第2ポットに回った。予選を無敗通過した実力は健在で今大会も優勝候補。カタルーニャ問題など国内情勢が不安定で、一体感に欠ける恐れも。 


○対抗 ポルトガル 欧州予選15得点のロナルドが攻撃の中心。22歳、185センチのアンドレ・シルバは代表デビューは昨年9月ながら同予選で9得点。エースとの2トップは世界屈指だ。16年欧州選手権では初優勝を飾った。予選は初戦のスイス戦に敗れた後、9連勝


▲穴 モロッコ 24歳FWツィエクはオランダとモロッコの国籍を持ち、悩んだ末にモロッコ代表を選択。オランダの英雄ファンバステン氏が「なんて愚かなんだ」と嘆くほどの逸材だったが、そのオランダは出場を逃し、モロッコは5大会ぶりの出場を果たす。


△大穴 イラン マンチェスターUでファーガソン監督の右腕として手腕を発揮したケイロス監督の下、堅守のチームに仕上がった。最終予選は10試合わずか2失点。FWにはオランダ1部ヘーレンフェインのグーチャンネジャド、ロシアのルビンでプレーするアズムンら。



◆C組 デンマーク ペルー オーストラリア フランス



フランス、エムバペ台頭で屈指の攻撃力

<展望> フランスは前回大会を経験したポグバやグリーズマンが中心となり1位突破を狙う。18歳のエムバペら若手も台頭し屈指の攻撃力を誇る。デンマークは80〜90年代に比べると個性派は少ないが、司令塔のエリクセンは予選プレーオフで3得点し勝負強さを発揮した。ペルーとオーストラリアは欧州勢と当たる1、2戦目で勝ち点を得たい。  


◎本命 フランス 予選はオランダ、スウェーデンを含めた「死の組」で首位突破、10試合6失点と堅守も光る。10年南アフリカ大会は1次リーグ敗退の屈辱も12年からデシャン監督下で再建。14年ブラジル大会では優勝したドイツに準々決勝で惜敗。16年欧州選手権は準優勝。


○対抗 デンマーク 愛称「ダニッシュ・ダイナマイト」の大黒柱MFエリクセンは予選とプレーオフ12戦で11得点4アシスト。18歳だった10年で大会最年少出場選手となり、以降代表の中心だ。FWは29歳のベントナーの他、22歳シスト、23歳ポウルセンが定着した。


▲穴 ペルー 9大会ぶりのW杯。ニュージーランドとのプレーオフ前には1カ月もリーグ戦を中断した。主将FWゲレロは要注意人物。スピードと俊敏性に加え、バネや筋力もあり、当たり負けしない。予選中のドーピング陽性反応でプレーオフには出場できなかった。


△大穴 オーストラリア シリアとのアジア予選プレーオフ、ホンジュラスとの大陸間プレーオフを勝ち抜いた。背水の計4試合で結束を強めた一方、ポステコグルー監督がW杯切符を置きみやげに電撃辞任。15年のアジア杯制覇など、母国を躍進させた名将が去った。現在監督は未定。



◆D組 ナイジェリア クロアチア アイスランド アルゼンチン



メッシ擁するアルゼンチン優位も全チームに突破望み

<展望> メッシを擁するアルゼンチンが優位。初出場のアイスランドは球際の厳しさを前面に出し、セットプレーなどで一瞬の隙を突くスタイル。クロアチアはモドリッチら主力が円熟期を迎え、ナイジェリアはモーゼスらが果敢にゴールに襲い掛かる。どのチームにも1次リーグ突破の望みがあり、初戦が重要になりそうだ。


◎本命 アルゼンチン 予選残り4試合でバウサ監督が解任され、サンパオリ監督が就任。プレーオフ圏外6位で最終節のエクアドル戦に突入。直前にアグエロがタクシー事故で肋骨(ろっこつ)骨折という崖っぷちの一戦は開始40秒で失点もメッシのハットトリックで逆転し突破。


○対抗 クロアチア 予選最終戦直前にチャチッチ監督を解任しダリッチ監督が就任。プレーオフでギリシャを退けて本大会出場を決めた。ユベントスFWマンジュキッチ、Rマドリードの10番MFモドリッチ、バルセロナの中盤に欠かせないMFラキティッチらタレント豊富。


▲穴 アイスランド 攻撃の要G・シグルドソンはミドルシュートや守備も。主将MFグンナルソンは元ハンドボール選手でロングスローが武器。チームの持ち味は組織力。人口34万人弱は歴代出場国最少。勝利の後に手拍子を合わせる儀式は「バイキング・チャント」と呼ばれる。


△大穴 ナイジェリア 今季からレスターで岡崎の同僚となったFWイヘアナチョが攻撃の核。約10年にわたりチェルシーに在籍し、現在は中国リーグ天津泰達所属の30歳、MFミケルも存在感。DFバログン、DFエコングは身長190センチ超でパワー、スピードともに抜群だ。



◆E組 ブラジル スイス コスタリカ セルビア



脱ネイマールの王国ブラジルがリード

<展望> 王国ブラジルがリードしそう。ネイマールに頼りきりだった攻撃陣ではガブリエルジェズス、コウチーニョら若手が育った。チチ監督は守備組織を整備し、攻守に隙がない。シャカら黄金世代で臨むスイス、マティッチが鍵を握るセルビアも上位を狙える実力がある。コスタリカは前回も死の組を突破して8強入り。


◎本命 ブラジル ネイマールを筆頭に予選7得点でチーム得点王のFWガブリエルジェズス、MFコウチーニョら前線のタレントは豊富。マルセロ、リオ五輪金メダルのマルキーニョスのタフな最終ラインも備え歴代最強の評価も。昨年6月就任のチチ監督の求心力は抜群。


○対抗 セルビア 予選首位通過も、直後にムスリン監督を解任して世界を驚かせた。理由は主力選手との確執などと指摘されたが、明確には分かっていない。後任は元セルビア代表のクルスタイッチ監督が就任。チームはMFマティッチを中心とした堅実なプレースタイル。


▲穴 スイス 予選では9勝1敗ながらポルトガルに届かず、北アイルランドとのプレーオフに回った。誤審疑惑で物議を醸したPKが「決定弾」になり、2戦合計1-0で競り勝った。司令塔MFシャカ、DFロドリゲス、絶対的エースのFWシャキリが中核。


△大穴 コスタリカ 予選では7回連続出場中だった米国に2試合とも勝って2位突破。Rマドリードの守護神ナバスに堅守の要DFゴンサレス、天才レフティーFWルイスが主軸。強い相手には5バックで守って、隙あらばサイドから速攻を仕掛け、前線のタレントにつなぐ。



◆F組 ドイツ メキシコ スウェーデン 韓国



ドイツが新旧充実の戦力で連覇目指す

<展望> ドイツは経験豊富なエジルやミュラーに新鋭のウェルナーらが加わり、充実した戦力で連覇を目指す。ただ、過去6大会連続で1次リーグを突破したメキシコとの初戦、堅守を武器にプレーオフでイタリアを破ったスウェーデンとの2戦目は油断できない。最終予選で苦しんだ韓国は、エース孫興民の奮起が欠かせない。


◎本命 ドイツ 連覇へ世代交代と準備を進める。6月コンフェデレーションズ杯は若手中心の1・5軍で初優勝。レーウ監督はロシア大会で、就任13年目という長期政権。指揮した2度のW杯、2度の欧州選手権はすべて4強以上。17年もAマッチ8戦6勝2分けの無敗。


○対抗 メキシコ MFドスサントス兄弟は2人でW杯出場を目指す。兄ジオバニとジョナタンはともにロサンゼルス・ギャラクシー所属。FWエルナンデスやFWロサノらを擁する攻撃陣とともに予選1位突破に貢献。W杯6大会連続で1次リーグ突破と安定感は抜群。


▲穴 スウェーデン 198センチGKオルセン、いずれも192センチのDFグランクビスト、FWトイボネンと大型選手が並び、空中戦、セットプレーで威力を発揮。4月に右膝靱帯(じんたい)を負傷したイブラヒモビッチがマンチェスターUで試合復帰し、ファンから復帰待望論。


△大穴 韓国 国内では史上最弱の声もあるがW杯は別もの。MF孫興民を中心にまとまれば1次リーグ突破の可能性も。28歳具慈哲主将らロンドン五輪で銅メダルを獲得したメンバーがチームの中心として健在。Jリーグでも多くプレーするGK陣が安定、大崩れしない。



◆G組 ベルギー パナマ チュニジア イングランド



ベルギー、イングランドの1位争い

<展望> R・ルカク、デブルイネらタレントがそろうベルギー、ケーンらが定着して世代交代が進むイングランドが軸。激戦の予選を無敗で突破した両チームが1、2位を争う展開だろう。チュニジアは78年大会以来のW杯2勝目、パナマは大会初勝利をもぎとれるか。この組を突破したチームは1回戦で日本のH組勢と対戦。 


◎本命 ベルギー ハリルホジッチ監督が「世界で4、5本の指に入る」と評す「赤い悪魔」。最高成績は86年の4位。R・ルカク、MFデブルイネが健在。昨年FIFAランク1位に立つも、思いのほか穴が。マルティネス監督の守備的布陣(5バック)にチーム内外から不満が。


○対抗 イングランド ルーニーの代表引退に象徴されるように世代交代が進む。24歳のFWケーンは昨季トットナムで30試合29得点と大爆発。10月5日のスロベニア戦は後半ロスタイムにW杯出場決勝弾。同じトットナムの21歳MFアリはリーグ年間ベストイレブン2度。


▲穴 チュニジア フランス1部レンヌのMFハズリが攻撃の中心。9月10日に酒井宏樹のマルセイユ戦で右からのクロスにニアサイドで右足ヒールキックでゴールを決めた。アフリカ選手権では04年優勝も、06年大会以降、7大会で最高成績が準々決勝進出と物足りない。


△大穴 パナマ 36歳MFペレスが初出場のチームをけん引。代表通算115試合43得点の大黒柱。4月にはMFエンリケスが銃撃を受けて死亡する事件も。ゴメス監督はコロンビアの名将マツラナの薫陶を受け、98年大会で母国を、02年大会でエクアドルを初出場に導く。



◆H組 ポーランド セネガル コロンビア 日本



日本、初戦落とせば崖っぷち 突破ラインは勝ち点4

<展望> 日本が対戦する3チームはいずれも強烈なエースを擁する。ポーランドのレバンドフスキとコロンビアのファルカオは得点パターンが豊富な万能型で、守備網を高くしたい。セネガルのマネはスピードがあり、スペースを与えると危ない。現実的な突破ラインは1勝1分けの勝ち点4。初戦を落とせば後がなくなりそう。 


◎本命 コロンビア 14年大会得点王のMFロドリゲスやMFクアドラードら前回8強組が中心。注目は同国代表最多得点記録(28)を持つFWファルカオ。前回は左膝前十字靱帯の負傷で欠場。モナコで昨季は21得点、今季も2位の13得点と「エル・ティグレ(虎)」復活の兆し。


○対抗 ポーランド 予選では10試合28得点も、14失点と守備に不安。得点源はエースFWレバンドフスキ。所属のBミュンヘンでは2季連続で30得点をマーク。16年欧州選手権では準々決勝で優勝したポルトガルにPK戦で惜敗も、過去最高の8強。台風の目になりそうだ。


▲穴 セネガル アフリカ勢の中で屈指のタレント集団。圧倒的スピードと身体能力が高いマネは、吉田麻也の元チームメート。モナコのケイタは昨季、ラツィオで16得点と高い得点能力を発揮。エバートンのゲイエやナポリのクリバリも欧州でトップクラスの実力者。


△大穴 日本 前回大会後に就任したアギーレ監督が八百長騒動もあり事実上の解任。急きょ就任したハリルホジッチ監督は堅守速攻、弱者の戦術を志向するが浸透度は微妙。若手登用は実績あるベテラン外しにもつながる。このさじ加減が、キーポイントとなりそう。


 ◆大会方式 32チームが8組に分かれて1次リーグを行い、各組上位2チームが決勝トーナメントに進出。勝ち点は勝ちが3、引き分け1、負け0。順位決定は(1)総勝ち点(2)全体の得失点差(3)総得点で2チーム以上が並んだ場合は(4)当該チーム間の勝ち点(5)同得失点差(6)同総得点(7)フェアプレーポイント数の順で決まる。すべて同じ場合は抽選。決勝トーナメントは90分で決着がつかない場合、前後半15分の延長を行い、決着しない場合はPK戦となる。1回戦は各組1位と他組の2位が対戦する。