【サンセバスチャン(スペイン)=高橋智行通信員】レアル・ソシエダードFW久保建英(22)はフル出場したが無得点に終わり、逆転での8強進出はならなかった。強豪パリ・サンジェルマン(フランス)にホームで1-2と敗れ、2戦合計1-4で敗退した。フランス代表FWキリアン・エムバペに前半15分と後半16分にゴールを奪われ、圧倒的な存在感を見せつけられた。

アウェーの第1戦を0-2と落とし、崖っぷちに立たされたRソシエダード。久保は4-3-3の右FWで先発した。2点を追う展開の中、次の得点がどちらに生まれるかが勝負のポイントだったが、エムバペにあっさりと崩された。

前半15分、ペナルティーエリア左奥で縦パスを受けたエムバペは右へのカットインから、打つと見せての鋭いストップモーションを入れる。対峙(たいじ)したRソシエダードの2選手はこの動きに翻弄(ほんろう)される。コースが空いたところ、角度のない位置から右足で強烈なシュートを対角のゴール右隅へと突き刺された。これぞスーパースターの輝きという個人技だった。

早々に3点のビハインドとなったRソシエダードは、ゲームの主導権を握られ、攻撃の糸口を見つけ出せない。悪い流れが続く前半29分。自陣でボールを奪われると、パリSGのバルコラに左サイドを突破され、ゴール前でパスを受けたエムバペに決定的な右足シュートを打たれた。ここはGKレミロが左足1本でのファインセーブ。何とか失点を免れた。

好機をつくれないまま時間が過ぎるRソシエダードは、前半42分にはカウンターから右サイドの久保にパスを渡す。久保は短いドリブルからゴール前のオヤルサバルへグラウンダーのクロスを入れたが、その前でカットされる。相手エリア内でボールを奪い返そうと久保は、猛然と目の前のポルトガル代表DFヌーノ・メンデスの足元にスライディングタックルを見舞う。これは危険なプレーでイエロカードを提示された。はやる気持ちが空回りした。

3分後、久保は再び右サイドでボールを持つと、今度はエリア外から思い切りよく左足を振り抜いた。膠着(こうちゃく)状態を打破するために個人で打開策を図った鋭いシュートは、惜しくもゴール左へ外れた。

今回の対戦では、エムバペとのエース対決が注目された。エムバペは圧倒的なスピードと切れを武器に、後半も次々と複数の選手を置き去りにするドリブルを披露した。一方の久保はドリブルで縦へ抜けだそうとした場面で、マークに付いたヌーノ・メンデスにボールを奪われ、そのまま縦に持ち出される場面もあった。

そして後半16分、エムバペが勝負を決する2点目のゴールを奪った。Rソシエダード陣内でのボールカットからのカウンター。後半から出場した韓国代表MFイ・ガンインが左前方のスペースへボールを送る。一気に走りこんだエムバペがゴール前まで持ち込み、右足で今度は対角でなく、冷静にニアサイドのゴール左隅へと蹴り込んだ。欧州CL通算46点目となるエムバペの一撃で、2戦合計0-4。絶望的なスコアとなり、ピッチ上の久保も苦渋の表情を浮かべた。

Rソシエダードはホームサポーターのためにも1点を返そうと必死の反撃を試みた。後半18分にはMFバレネチェアがクロスボールを頭で押し込んだ。しかしVARでオフサイドが確認されてノーゴールとなる。

後半20分には左サイドからの速いクロスボールにオヤルサバルがゴール前で足を伸ばしたが、あと1歩のところで触れず、ボールはゴールラインを割った。続く後半22分、ゴール前でパスを受けたMFミケル・メリーノの左足シュートはゴール枠を超えた。さらに後半34分にもゴール前へ押し込んだが、シュートはパリ・サンジェルマンのGKドンナルンマに阻まれた。

そして後半44分、意地の1点を返した。右サイドに流れたボールを久保がキープ。味方の動きを促してパスをつなぐ。このプレーを起点にゴール前に入ったボールからミケル・メリーノが左足で押し込んだ。焼け石に水だったが、やはり久保が絡むことでゴールは生まれた。

久保は最後までピッチに立って走り続けた。今回の欧州CLは1次リーグから全8試合に出場したが、個人としては無得点のままで終了。今回のエムバペとの対戦によって、欧州で勝ち抜くための「決定力」をまざまざと見せつけられた。