柄にもなく幸せについて考えた。テロ予告から始まったソチ五輪では、セキュリティーがとにかく厳しい。プレスセンターに入る時に荷物検査が入念に行われ、移動する報道陣用のバスに乗り込めば、取材証に埋め込まれているＩＣチップで本人確認がされる。チェックが終わったバスのドアを閉めると、ドアにシールが貼られる。移動中に不審人物などによって開閉がされていないかなどをチェックするためだ。

　街には昼夜問わず、一般人よりもはるかに多い警官がうろうろしている。安全のためだからありがたいが、異様な光景でもある。日本ではここまで命について、「テロ」について意識したことがなかった。でも、前回バンクーバー大会の時も感じたが、「命の危険」を感じる世界の祭典で人々はどこまで本当に楽しめるのだろうか？

　政治、宗教や国際紛争を語れるほどの見識はないが、幸せはもっと単純であっていいと思うし、ヒューマンなものだと思う。国を背負い、泣き笑いで感動を与えてくれる選手たちの姿にだれもが胸を熱くしているはず。人間はもっと、もっと優しくなっていい。「五輪に国境はない」。使い古された言葉だが、ソチにいるとやけに心に響いてくる。【松末守司】