[ 2014年1月30日14時4分

 紙面から ]<連載:高梨沙羅

 初代女王のプレリュード第10回>

 五輪シーズンの13-14年は、「打倒サラ」を目標に、チーム作りから始まった。5月25日に森永製菓「ウイダー」と正式に契約。2年前からトレーニング施設を使い牧野講平トレーナー、細野恵美栄養士から指導を受けていたが、さらに徹底されることになった。29日には所属先を「クラレ」に変更し、スキー部が設立され、父寛也さんが監督に就任。7月14日には尊敬する第一人者の山田いずみ氏がパーソナルコーチに就くなど、「チーム沙羅」を結成し、五輪金メダルへの態勢を整えた。

 夏の強化は体幹を鍛えることから始めた。腹筋や背筋などの筋力トレーニングではなく、コアな部分を意識した地味だが負荷のかかるハードなトレーニングを増やした。逆にジャンプ練習を減らし、足は着地の衝撃に耐えるよう強化した。さらに、弱点だったテレマーク姿勢の際の重心を前に置くことで、より入れやすくする動作を何度も反復して自分のものにした。牧野トレーナーは「すべての面で進化している」と明言する。

 栄養管理も徹底した。海外遠征でも食べた食事をすべて画像で日本に送り、細かく栄養バランスをチェックした。高梨は「周りに支えてくれる人がたくさんいて、100%競技に集中できる環境が整った」と夏の成果を口にする。

 高梨は今季開幕からW杯でいきなり4連勝を達成し、成果はいきなり表れた。助走から踏み切りにつながる動作がスムーズになったことで、瞬時に空中姿勢に入り、着地の確率も数段に上がった。開幕戦では5人の飛型審判中2人が20点満点を出すなど、飛型点で得点を稼げるようになり、弱点が武器になった。「夏にしっかり土台を作れた」と納得する。

 五輪には夏にケガを負ったライバルのヘンドリクソン(米国)の出場が濃厚だ。進化して迎えるソチの舞台で、真の決着をつける。(おわり)