そしてシューズは、担当者泣かせでもある。アシックス社の田崎公也さんは「大変ですよ」と苦笑いする。一般的なトップ選手は、スパイクを年3回ほど新調する。桐生の場合は月に1回ペースで変更する。練習の感覚を試合でそのまま維持するため、練習用と試合用でスパイクを使い分けない。スタート時は爪先を地面に擦るように低く出る。だから頻繁に替える必要がある。

 この日、決勝の15分前。招集場所から、桐生はダッシュでサブグラウンドに戻ってきた。履いていたスパイクの先に穴が開いていた。大急ぎで新しいスパイクに変更した。快挙の裏にはこんなドタバタ劇もあった。【上田悠太】