中村太地(25=ミズノ)が最終6投目で18メートル85の日本新記録を樹立し、4位に入った。15年に畑瀬聡(群馬綜合ガードシステム)がマークした18メートル78を7センチ更新。175センチ、115キロの巨体が取材エリアに現れると、開口一番に「『うれしい』という言葉しかないです」とニッコリと笑った。

 茨城・笠間高時代は円盤投げでインターハイを制覇。国士舘大進学後にその利点を生かして、日本人では少数派の回転投法を磨いてきた。ここ数年は「練習をしている中で量より質にこだわるようになった。気持ちが入っていなかったら、やめるようにした。無理して投げたら、手元や足元が狂う」。それほどまでに「いいイメージ」が固まってきている。

 世界記録は23メートル12。そこには4メートルを超える大きな差がある。だが、中村にも世界と戦うための1つの指標がある。

 「海外に劣るのは筋力。でも、日本人らしさを忘れないことが大事だと思います」

 ベンチプレス220キロをはじめ、スクワット290キロ、ハイクリーン180キロ…。海外のトップ選手のトレーニング動画をSNSで見ていると、毎日コツコツと鍛え抜いて高めてきた数値は大きく変わらないことが分かった。「ここまで来ると、もう数値はなかなか上がらない。むしろ上げようとしたときにケガをしそうになる。でも、スクワットは290キロなんで、300キロまでいきたいですね」。この向上心の持続こそが、世界との差を詰めるヒントと考える。

 「まずは19メートルを超えないと話にならない。そこから時間をかけて、20メートルに挑戦したいです。投てきの成長(の最高)は27~28歳というのを聞いたことがあります。まだまだ練習を積んでいきたいです」

 6月22日からはアジア大会(8月、ジャカルタ)の選考会となる日本選手権(山口)が行われる。「日本選手権は難しい。去年も緊張で脚が震えていた」。1年前の同選手権は5位に沈み、直後の7月に行われたインドのアジア選手権において18メートル46の好記録で5位入賞を果たした。その場では自分でも驚くほどリラックスしていたという。その学びを日本選手権に生かす。テーマは1つ。

 「普通にやります」

 日本新記録の喜びもほどほどに、通常モードでさらなる高みを目指す。【松本航】