アジア、米国で開催されてきたダイヤモンドリーグは第4戦から舞台をヨーロッパに移す。ローマ大会では9種目に昨年のロンドン世界陸上金メダリストが出場。男子400メートル障害のカルステン・ワルホルム(22=ノルウェー)は実力が試され、女子走り高跳びのマリア・ラシツケネ(25=ロシア/個人参加)は世界記録への挑戦が注目される。

 

 昨年の世界陸上前のワルホルムはノーマークに近い存在だった。前年のリオ五輪で準決勝まで進んでいたが、世界陸上時点のベスト記録は48秒25。下位入賞はぎりぎり期待できても、メダルに届くと予想できるタイムではない。

 ところが雨天のなかで行われたレースは1台目からワルホルムがリードし、そのまま逃げ切ってしまった。48秒35は世界陸上史上最も低い優勝タイム。ワルホルムは「信じられない」という言葉を何度も繰り返した。

 

 昨年の世界陸上は大会期間を通じて涼しく、さらに雨が降ったことが「ノルウェーの気象のようで自分に合っていた」のだろう。雨天のときは転倒などのリスクがありトップ選手といえども慎重なレース運びになる。為末大が銅メダルを獲得した2005年ヘルシンキ世界陸上でそうしたように、ワルホルムは思い切った先行策をとることで他の有力選手たちにプレッシャーを与えることができた。

 

 ワルホルムの400メートル障害は今大会がシーズン初戦となる。

 昨年もダイヤモンドリーグはオスロとストックホルム、北欧2大会で優勝していたがタイム(48秒25と48秒82)は低調だった。ローマが通常の気象条件で優勝タイムも47秒台となったとき、ワルホルムがどこまで対応できるのか。普通のコンディション時の力が試されることになる。

 

 女子走り高跳びのラシツケネは、リオ五輪こそロシアのドーピング問題で出場できなかったが、世界陸上は15年北京、昨年のロンドンと2連勝中。昨シーズンは2メートル03、04、06と自己記録を3試合で更新した。今季も室内で2メートル04と、1センチではあるが室内の自己記録を更新している。

 ローマ大会会場のスタジオ・オリンピコは、1987年ローマ世界陸上が行われた競技場。女子走り高跳びではステフカ・コスタディノワ(ブルガリア)が2メートル09の世界記録をマークした。

 現在、この種目に強力なライバルは見あたらない。2メートル01~03を跳べば優勝は決まるだろう。その次は自己新の2メートル07に挑戦するか、それとも世界記録にバーを上げるのか。

 

◆ダイヤモンドリーグはIAAF(国際陸上競技連盟)が主催する単日、または2日間開催では最高カテゴリーの競技会シリーズ。2010年に発足し、一昨年までは年間総合ポイントで各種目のツアーチャンピオンを決定していた。昨年からシステムが変更され、ファイナル大会出場者を決めるクオリファイリング大会として12大会を実施し、16種目ずつを行うファイナル2大会の優勝者がダイヤモンドリーグ優勝者となるチャンピオンシップ形式になった。各クオリファイリング大会の種目別賞金は3万ドル(1位1万ドル~8位1000ドル)で、各種目は年間4~6大会で実施される。各大会のポイント(1位8点~8位1点)合計上位8人(種目によっては12人)がファイナル大会に進出。ファイナル大会の種目別賞金は10万ドル(1位5万ドル~8位2000ドル)で、年間優勝者には賞金5万ドルとダイヤモンド入りトロフィーが贈呈されるのに加え、来年の世界陸上への出場権が得られる。出場者はトップ選手に厳選され、ほとんどの種目が予選なしの一発決勝で行われるため、緊張感あるレースがスピーディーに続く。また、オリンピックや世界陸上のように1種目3人という国毎の出場人数制限がないため、ジャマイカ、アメリカ勢が揃う短距離種目や、アフリカ勢が多数出場する中・長距離種目など、五輪&世界陸上よりレベルが高くなるケースもある。