全日本実業団対抗女子駅伝(25日、仙台)で初優勝を目指すダイハツのエースが松田瑞生(23)だ。東京五輪マラソン最重要選考レースのMGC出場資格を持つ選手は、現時点で8人。松田は今季マラソン2レースを走ったが、6月の日本選手権1万メートルでも優勝したスピードを武器とする。全日本実業団対抗女子駅伝では3区に出場予定で、トラックのスピードとマラソンのスタミナを融合した走りを見せる。

松田は初マラソンだった1月の大阪国際女子に2時間22分24秒で優勝した。テレビカメラに向かって「イエーイ!」と叫び、駆けつけた母親とは掛け合い漫才のようなやりとりを見せた。大阪育ちの松田が地元の声援に押され、レース終盤もテンションを上げて走ったことで五輪候補に躍り出た。

その松田がクイーンズ駅伝ではなぜか、結果が良くない。入社1年目の14年こそアンカーで派手なガッツポーズを見せた。区間4位だったが、チーム最高順位の2位でのフィニッシュが素直にうれしかった。2年目以降はエース区間の3区を走り続けてきたが、区間11位、8位、6位といまひとつ成績が続いている。上原美幸(23=第一生命)に競り負けた昨年のように、気合が入りすぎると走りが乱れることがある。寒さを苦手とすることも一因かもしれない。昨年は最後の1キロで「おなかが冷えて、腹痛と闘っていました」という。

だがマラソンを始めたことで、今年は違った強さを身につけている。“浪速の腹筋女王”の異名を取るほど、腹筋を鍛えてきた。ダイハツの林清司監督は「おなか周りを意識することで、力を使わずに脚が前に出る省エネ走法になる」と、練習中からフォームを意識させ続けている。松田本人も「マラソン練習は長い時間走るので、少しでも楽に走れるフォームを考えながら走っています」と、大阪国際女子マラソン後の取材で話していた。

2戦目の9月のベルリンでも2時間22分23秒と自己新を出すことができた。松田自身はもっと上の記録を狙っていたため納得していないが、マラソンを始めた松田は省エネでの走りが乱れない。そしてマラソン2レースの間に日本選手権1万メートルで連覇を達成した。スピードもまったく落ちていない。

駅伝前の合宿で林監督は、練習タイムを抑えめに設定した。松田自身は「リズムが作れなかった」と不満を漏らすが、余裕があるからジョッグをしっかりと行うことができた。血液状態も大阪前と同じくらいに良いという。

今シーズンはマラソン、トラック、マラソンとレベルの高いレースと練習を行ってきた。直前の合宿で無理はしなくても、スタミナとスピードが松田の体に染み込んでいる。

大阪国際女子マラソンでは高校の後輩の前田穂南(22=天満屋)が先行したが、31キロ手前で逆転した。35キロまでの5キロは16分19秒までペースアップ。このスピードの切り替えができれば、五輪や世界陸上でもメダルを期待できる。

日本選手権でも2年続けて、鈴木亜由子(27=JP日本郵政グループ)をラストで逆転した。今年の松田は駅伝でも、すごい追い上げを見せそうだ。