全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝=1月1日、群馬県庁発着)には来年9月のMGC(※)に出場する選手が多数出場する。旭化成の連勝ストップを期すトヨタ自動車では、藤本拓(29)が10月のシカゴで2時間7分57秒、服部勇馬(25)が12月の福岡国際で2時間07分27秒と2人の選手が2時間7分台をマークしてMGC出場を決めている。

藤本と服部は学生時代の実績も、マラソン練習も対照的な2人だ。

藤本は国士大3、4年時に関東インカレ5000メートルで連覇したようにトラックのスピードランナーだった。一方の服部は東洋大3、4年時に箱根駅伝2区で連続区間賞を獲得しロードでの実績が目立つが、1万メートルでも28分台前半のスピードも持ち、4年時には東京マラソンにも出場していた。

藤本はトヨタ自動車に入社して月間走行距離を増やし始めた。しかし、ただでさえ多かったケガがさらに増えてしまった。そこで食生活を改善し、走りの接地の仕方を見直すとともに、自身に適した練習の距離とペースを探った。2度目のマラソンとなったシカゴ前は、練習の距離走は35キロが最高で、40キロ走は行わなかった。これはマラソン前日本記録保持者の設楽悠太(ホンダ)に近い練習方法といえそうだ。さらにアフリカ勢のトレーニングなども研究し、フィジカルトレーニングも念入りに行っている。藤本は「1回に走る距離にこだわる必要はない。トータル的に負荷をかければ、後半のスタミナにつながります」という持論の元、2時間7分台にたどり着いた。

一方の服部は、40キロ走を行わないマラソン練習は「自分にはあり得ない」と言う。福岡に向けての練習では40キロ走を7本行い、そのうち1本は45キロ走だった。月間走行距離も以前より200~300キロ増え、10月は1000キロを超えた。服部は距離を増やしただけでなく、走り方を自身の判断で工夫。「ジョグの動きとレースの動きを同じにした」と言う。ストライドを伸ばしてスピードを上げると大きなエネルギーを使うので、フォームは変えずにピッチを速めることでスピードを上げるようして、後半のスタミナ切れを克服。福岡国際では優勝してMGC切符を勝ち取った。

今回のニューイヤー駅伝での起用区間は藤本が最長区間の4区か、よりスピードが要求される3区が濃厚。服部はマラソン後の回復によるが4区か、向かい風で緩やかな上りの多い5区だろう。主要区間である3、4、5区には連覇中の旭化成に区間賞獲得者が多い。しかしトヨタ自動車の佐藤敏信監督も、「ウチもかなり良い選手を置ける」と自信を見せている。マラソンで飛躍した2人が、打倒旭化成に向けても大きな役割を果たしそうだ。

※MGC=マラソン・グランドチャンピオンシップ。東京五輪マラソン代表選考会。