箱根駅伝の激闘から一夜明けた4日、東海大副学長の山下泰裕氏(62)が初優勝の喜びを語った。8年前に両角速監督(52)に就任を依頼した同氏は、監督の人柄を絶賛。就任依頼の理由や経緯を明かした。

「本当に誘ってよかったと思います」。山下氏は感慨深げに話した。東海大湘南キャンパスのある平塚市を通る箱根駅伝。低迷脱却へ指導者を探した。「陸上は分からないけれど、いろいろと相談して卒業生の両角監督が挙がった」。指導者としての手腕、情熱は抜群。友人の瀬古利彦氏の「控え選手も分け隔てなく同じように指導する。なかなかできない」という評価で就任要請を決意した。

長野・佐久長聖高に自ら出向き、理事長や校長にも頭を下げた。両角監督からは「学校がOKなら」という返事をもらったが「高校が許してくれるかな」という思いだった。しかし「功績に報いるために、監督の希望をかなえたい」と快諾を得た。「その言葉だけで、両角監督がどれだけ信頼されていたかが分かった」と山下氏は振り返った。

就任時、同監督から「箱根に勝つためだけの指導はしない」と言われた。「大学の広告や宣伝とは考えていない。学生の個性を尊重した指導をしてほしいと頼んだ」と話した。「柔道など他のスポーツも同じで、0と1は違う。1度勝つと2、3と勝てる。ただ、大切なのは勝つことだけではなく、学生の可能性を信じて、伸ばすこと。指導者、教育者として、両角監督は素晴らしい」。初優勝の喜びをかみしめながら、副学長は将来にも期待した。