川内優輝(32=埼玉県庁)が“公務員ラストマラソン”を日本人2位(全体8位)で飾り、今秋ドーハでの世界選手権の選考基準をクリアした。29キロ付近で右足に異変も終盤に根性で巻き返し、公言していた2時間9分台でゴール。出場権を得ていたMGCではなく、ドーハを目標に定めた。山本憲二(マツダ)が日本選手トップの7位。山本浩之(コニカミノルタ)と河合代二(トーエネック)が新たにMGC出場権を獲得した。男子の出場権獲得者は計30人となった。

いったん消えても、顔をゆがめた必死の形相でよみがえってくる。公務員として最後のマラソンも、川内らしさ全開だった。

先頭集団がペースを上げた29キロ付近。右ふくらはぎが「ピリッときた」。ズルズル落ちかけたが気持ちを入れた。力になったのは沿道の声援。そして「ドーハ、ドーハ」と心の中でつぶやき続けた呪文だった。「びわ湖ではいつも前半で落ちていた。何とか『サブ10』でいけてうれしかった」。宣言通りの2時間9分台に満足感をにじませた。

すでにMGC出場権を得ていたが、これで選考基準をクリアした世界選手権へ狙いは定まった。たとえ優勝しても東京オリンピック(五輪)の代表選考に影響しない。五輪への意欲は保留している川内だが、ドーハに向けては「MGCに出られないからではなく、覚悟を持った人が選ばれるべき。自分はドーハだけに100%尽くす」と意欲をあふれさせた。

世界選手権には悔いがある。17年ロンドン大会。序盤に転倒などのアクシデントがありながら、終盤に魂の猛追。結果は9位で8位入賞に3秒足りなかった。「ロンドンの3秒、できなくて悔しかった」。プロ転向の決断への要因ともなった「3秒」。五輪よりもほしいものがそこにはある。プロランナー川内の目標はぶれない。【実藤健一】

◆世界選手権ドーハ大会選考基準 枠は3。男子は北海道、福岡国際、別府大分、東京、びわ湖毎日が選考会。(1)選考会でMGC資格を取得できる成績を残した選手(2)日本人3位以内に入った選手(3)5月31日時点で国際陸連のワールドランキング日本人上位者、が選考対象になる。ただし同選手権男子マラソンはMGCから中20日で行われるため、MGCに出場する選手は選ばない方針。川内は優先度の高い(1)に該当、世界選手権優先を表明している。