大型ヒロインが東京オリンピック(五輪)へ前進した。女子やり投げで北口榛花(はるか、21=日大)が64メートル36の日本新記録を樹立した。

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北海道旭川市で過ごした18年が、北口の土台を作った。3歳で始めた水泳は母規子さん(54)の「ぽっちゃりとしているから、やせた方がいい。おなかを引っ込めるのにいいし、全身運動だから」との考えがきっかけだった。

母は娘の性格を「おっとりとしていて、見たまま」と言うが、小1の途中から始めたバドミントンでは6年時に全国大会の団体戦優勝。敗戦後に泣き続けるなど、負けず嫌いの一面も加わり、すべての要素が旭川東高で、であった陸上につながった。

父幸平さん(53)はパティシエで、ヘーゼルナッツが実る「榛(ハシバミ)」を「榛花」の名前に用いた。この日現地観戦した父は、競技時間発表前に航空券を手配。結果的に開始30分前の午前10時に関西空港着で「どうせ間に合わないし、夜に食事だけでも…」と考えていたが、たまたま娘の名前と同じ特急「はるか」の乗車に成功。4投目に間に合い、5投目の日本記録樹立に立ち会えた。「のびのびと育ってほしい」という願い通りに飛躍する北口の快挙は、家族への恩返しにもなった。【松本航】