全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)は来月1日、前橋市の群馬県庁前を発着点とする7区間(100キロ)で行われる。中国地区大会を制したマツダは20年1月30日に会社創立100周年を迎える。古豪復活を期すチームは16回大会(1971年)以来となる48年ぶりの優勝を狙っている。

山本憲二(30)と延藤潤(28)の東洋大コンビがマツダ躍進の原動力となっている。7位に入賞した前回大会は延藤が3区で区間2位、山本が最長区間の4区で区間3位と快走。4区を終わった時点ではチームは4位と健闘を見せた。

山本は昨年の東京マラソンを日本人5位で走ってMGCの権利を獲得。9月の本番で五輪マラソン代表を狙った。第2集団で2度、早い段階で仕掛けたが、大迫傑(28=ナイキ)らが、設楽悠太(28=ホンダ)を追って前に出たときは自重した。「徐々に追いつけばいいと判断しましたが、そのままずるずる後退してしまいました」と山本。MGCの1カ月前に2週間ほど脚に痛みが出た。その間の練習不足を気にしてしまったのかもしれない。

東京五輪への残るチャンスはMGCファイナルチャレンジでタイムを出すこと。現時点では3月の東京マラソンを視野に入れているが、そこで2時間5分49秒以上の記録を出せば3人目の代表入りが有力になる。

山本は「4区を前回以上のタイムで走れば、1~2月の練習が高いレベルでできます。ファイナルチャレンジに向けて自信になる」ともくろむ。前回のニューイヤー駅伝は4区の22.4kmを1時間5分30秒で走破した。マラソンの半分の21.0975kmに換算すれば1時間1分41秒だ。ニューイヤー駅伝で1時間0分台に相当するタイム(4区なら約1時間4分45秒)で走っておけば、仮に東京マラソン中間点を1時間3分前後で通過しても余裕度が大きくなる。

山本が意欲を示すが、4区は延藤の可能性もある。増田陽一監督は「前回の延藤は3区しか考えられませんでしたが、今回は3、4、5区のどこでも行ける」と、1年間の成長を認める。11月の中国実業団駅伝では、MGC後の休養明けだった山本は1区(12.5キロ)に回り、最長区間の6区(19.0キロ)を延藤が受け持った。その区間を延藤は55分47秒で走り、区間記録を38秒も更新。10キロ通過は28分25秒という速さだった。

前回大会では2区終了時点で23位と大きく出遅れた。強力な両エースを生かすためには出遅れは厳禁だ。10位前後で3区の延藤にタスキが渡れば、4区の山本で先頭に立つこともできる。仮に4区に延藤、5区を山本という区間エントリーができれば、3区を任せられる選手が育っていることになる。その布陣が機能すれば、マツダの48年ぶりの優勝も現実的になる。

両エースの前後を固める選手たちが、どこまで旭化成とトヨタ自動車の2強に対抗できるか。前回5区を区間4位で走った橋本澪(25)が故障でエントリーできなかったのは痛手だが、前回欠場したベテランの円井彰彦(35)が復帰する。円井は長年にわたってマツダを支えてきた選手だ。さらに国学院大から入社して2年目の向晃平(23)の成長も期待されている。東洋大ではエースではなかった山本と、延藤が日本トップレベルに成長したように、向も先輩2人を追って成長している最中だ。

マツダは自動車メーカーの中では社員数が少なく、“スモールプレーヤー"の社風を自認した会社だ。駅伝でも2強ほど選手層は厚くないが、選手をしっかりと育てることで優勝を狙える位置まで来た。創業100年の節目にマツダらしさを発揮した走りを見せる。