全日本選手権3連覇中のエース宮原知子(19=関大)がグランプリ(GP)シリーズ第4戦NHK杯(10日開幕、大阪)で320日ぶりの実戦復帰を果たす。昨年12月のGPファイナル直前に左股関節の痛みを覚え、全日本選手権優勝を経て疲労骨折が判明。今年2月の4大陸選手権と3月の世界選手権を欠場し、昨季は苦いシーズンになった。

 その宮原が明るさを持ち合わせて帰ってくる。10月8日に都内で行われたGPシリーズの記者会見。高めのヒール、スーツで大人の装いをした宮原は「自分ではあまり分からないんですが、周りから『明るくなった』って言われます。自分でも『いっぱい笑って、毎日楽しく過ごせた方がいいな』と思って、あまりネガティブにならないようにしています」と明かしながら穏やかに笑った。陥りがちな虚無感や、悔しさをリセットしたのは、意外にも氷から完全に離れた3月下旬からの約1カ月間だった。

 その期間は週末だけ京都に帰り、東京の国立スポーツ科学センター(JISS)を拠点にリハビリに取り組んだ。他競技のトップアスリートと接することで、心は徐々に前へと向く。「あんまり『つらいな』とはならずに、結構、毎日ポジティブに過ごしていました。新しい友達がたくさんできました」。スケート漬けの毎日ではできなかった映画や音楽鑑賞の楽しさも知り「『いろいろなものに触れてみよう』と思うようになったのが良かったです」。心身のエネルギーを蓄え、5月から再び氷に乗った。

 今季のテーマは「初志貫徹」。思いの丈を「休む時期があったり、思うように練習できない時期もあった。今シーズン、何があってもしっかり、自分らしいスケートで滑りきるっていう志です」と言い切る。浜田コーチは「2~3週間前から本格的な練習をできるようになりました」と明かし、最大のターゲットを18年平昌五輪の代表選考に大きく影響する12月の全日本選手権に据える。「全日本で一番いい演技をしたい」と意気込む宮原は、顔を上げて1歩ずつ進んでいく。【松本航】

 ◆宮原知子(みやはら・さとこ)1998年(平10)3月26日、京都府生まれ。4~7歳は米ヒューストンで暮らし、6歳で競技を始める。ジュニア時代の12年全日本選手権で3位に入り、シニア1年目の13年NHK杯でGPデビュー。初出場の15年世界選手権で2位となり、GPファイナルは15、16年と2年連続2位。全日本選手権は14年から3連覇中で、218・33点の自己ベストは国際スケート連盟公認大会で女子世界歴代5位。151センチ。



宮原のデータ
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