18年平昌(ピョンチャン)五輪代表の最終選考会となる全日本選手権が21日から行われる。開幕を前に10年バンクーバー五輪代表で本紙評論家の小塚崇彦氏(28)が、代表争いを占った。前編は3枠を争う男子シングル。【取材・構成=高場泉穂】

 羽生選手の全日本選手権への欠場が決まり、2年連続で彼の姿を見られないのは残念だ。連盟の発表している五輪選考基準に当てはめると、それぞれの項目で宇野選手の名前が目立つ。今季ここまで日本勢で最もいい成績を収めており、代表の権利はほぼ手中にしているといっても過言ではないだろう。

 羽生選手は欠場でも、実績から見て選考基準の3枠目として選考されるだろう。この2人を除いた、2枠目の争いが焦点となる。最終グループ6人に入ってくるのは無良、村上、田中、友野、須本選手あたりか。この中で選考条件に当てはめると、全日本選手権で2位となった者が五輪の切符を手に入れるということになる。ベストスコアでいうと田中選手が1歩リードしているように感じる。しかし、内容からすると実力を持っているのに、試合で力を出し切れていない。もったいないと感じる。1度、ここで完璧な演技を見せてほしい。

 ベテランの無良選手、村上選手に関しては、「もっと、しっかりやれ」の一言。厳しいことを言うようだが、これで本当に五輪に行くのか、という演技しかまだやっていない。五輪に行きたい気持ちは強くあると思うが、現状の内容では、先を見据えて若手に枠を与えたいという考え方も出てきてしまうのではなかろうか。全日本は、最後のアピールの場。選考基準がどうという問題ではなく、みんなが「行ってらっしゃい」と気持ち良く思える演技を期待したい。村上選手は、全日本にピークを合わせられない印象だが、悪いイメージを忘れること。僕は「得意」とあえて公言していた。強い気持ちで臨むのが大切だ。

 友野選手にも十分チャンスがある。彼のスケートは、見ていて面白い。ジュニアGPファイナルで3位に入った須本選手は、五輪を変に意識して、緊張するんじゃないか。自分もトリノ五輪シーズンの17歳のとき、ジュニアGPファイナルで優勝し、勢いに乗っていたが、全日本では散々なショートプログラムだった。全日本は、一筋縄ではいかない。気が引けると、緊張感がすっと心の隙間に入り込んでくる。

 彼らは、これからが伸び盛り。先輩たちに臆することなく演技し、最高の形で大会を締めくくってほしい。

 ◆男子の五輪代表選考 代表枠は3人で全日本選手権優勝者が最優先で代表入り。2人目は全日本2、3位、全日本覇者を除くGPファイナルの日本勢上位2人から選考し、3人目はここで漏れた選手と代表決定済みの2人を除く、全日本終了時の世界ランクなどから決める。

全日本選手権にエントリーした主な男子選手
全日本選手権にエントリーした主な男子選手