「日本のサッカーで今、何が足りないか分かるかい? どんな相手にでもゴールを決める。そんな選手がいないんだなあ」
元日本代表FWで1968年メキシコ・オリンピック(五輪)で得点王になった釜本邦茂さん(78)は、子供たちにそう語りかけた。
5月中旬、京都市内で開かれた(株)スリーボンド主催のサッカー教室「KAMAMOTO Football Festival」。集まった小学生に伝えたのは「どうやったらゴールを決められるのか」という、シンプルでありながら難しいものだった。
「先日、京都サンガとガンバ大阪の試合を、テレビで見ていたんだ。そしたら2試合で生まれたゴールはたった1点だけだ。京都は0-0で、ガンバは1-0で勝ったけど、点を決めたのは外国人の選手だった。180分もサッカーを見ていて、ゴールを決めた日本の選手がいないんだよ。これでは困るよなあ」
J1第13節(5月14日)。本拠地のデーゲームを戦った京都は、両チーム無得点のまま清水と引き分け。アウェーのナイターだったG大阪は、後半にブラジル人MFダワンが挙げた唯一の得点を守り1-0で柏に勝った。
この2試合、確かに日本人選手に点は生まれていない。
歴代の日本代表で最多ゴール(76試合75得点)を記録した人の言葉である。2試合をはしごした釜本さんが、「困るよなあ」と漏らすのもうなずける。
「君たち(小学生年代)の頃から、もっと点を取る練習をしなくちゃいけないよ。私が(本格的に)サッカーを始めたのは中学からだから、みんなくらい(の年代)からやっていたら、もっとうまくなっていたかもなあ」
この日、生まれ育った京都を訪れたのは久しぶりだったそうだ。
「高校までは京都だったから、懐かしいねぇ」
京都・山城高では1961年度の全国高校選手権で決勝進出。修道高(広島)との決勝戦は敗れたが、この頃から得点へのこだわりは人一倍強かった。
早大を経てヤンマー(現セレッソ大阪)へ。日本リーグで7度の得点王に立つなど、251試合に出場し202得点を決めた。
J1の歴代最多得点が、昨季限りで引退した元日本代表FW大久保嘉人氏の191点(477試合)。時代は違えど、数字を見ればそのすごさをうかがい知ることができる。
「いいかげんにボールを蹴るのではなく、正確にやること。シュートとパス、ボールを運ぶ練習は毎日、毎日やるんだぞ」
釜本さんは、特別講師の元日本代表DF加地亮さんと一緒に約5時間、子供たちに丁寧に教え続けた。
11月にはW杯カタール大会が幕を開ける。日本代表は1次リーグで、優勝候補にも挙げられるドイツ、スペインと同組。世界との真剣勝負の場で得点を重ね、勝ち進むことができるのか。
W杯まで残り5カ月。欧州組ひしめく日本代表の中で、鹿島アントラーズのFW上田綺世(23)はJ1得点ランク単独トップ(5月末時点、10得点)を走る。楽しみな存在がいるのも事実だが、上田は6月の代表合宿をケガのため途中離脱。14日のキリン杯決勝・チュニジア戦は欠場となった。
「どんな相手にでもゴールを決める」
単純であり難解な釜本さんの教え-。
救世主がW杯で出現すれば、日本に明るい未来が待ち受けるだろう。【益子浩一】



