米PGAツアーでは、ブライソン・デシャンボーの圧倒的な飛距離が驚異の的となっているが、米シニアのチャンピオンズツアーでは、今年から参戦したフィル・ミケルソンが圧倒的な飛距離を武器に強さを見せている。シニアツアーは調整の位置づけだから当然なのかもしれないが、ドライバーの飛距離で他の選手を20ヤードから30ヤード、オーバードライブして圧倒し、2戦2勝。出場すれば、優勝するという勢いだ。
■初参戦ミケルソン、圧倒的な強さ
特にシニアデビューのチャールズ・シュワブシリーズ at オザークナショナルでは、初日から首位を走る完全優勝で、2位とは4打差。352ヤードのパー4では1オンに成功してイーグルを奪うなど、完勝だった。2戦目のドミニオンチャリティークラシックは最終日に3打差の2位スタート。しかし、順調にバーディーを奪い、終わってみれば2位に3打差をつけての逆転優勝だった。
このとき、2位だったのは、やはり今年からシニアに参戦したマイク・ウィアー。ウィアーとミケルソンは同じレフティーで同じ年齢ということもあって、かつてはライバルと目されていた時期もあった。2人の戦いを懐かしく思ったファンも多かったのではないだろうか。
マイク・ウィアーはカナダ出身。13歳のときに、左利きを直すべきかどうか迷い、ジャック・ニクラウスに手紙を書いて相談したという逸話がある。ニクラウスは「そのままにしてください」という返事を送り、ウィアーもそれに従ったそうだ。
ちなみに、ミケルソンは右利きだが、幼いときに父親と向かい合わせになって練習したため、左打ちになったという。
■メジャー制覇はウィアーが先
マイク・ウィアーがメジャーを初制覇したのは2003年のマスターズ。ミケルソンのメジャー初制覇は翌年のマスターズで、実はウィアーのほうが1年早くメジャーを制している。
しかしその後、ミケルソンが全米プロ、全英オープンを制し、キャリアグランドスラムに王手をかけるなど米ツアー44勝を挙げているのに対し、ウィアーはツアー8勝。キャリアに大きく差がついてしまった。
しかし、ウィアーはシニアツアー参戦のため、コーチのマーク・ブラックバーンとともにスイングの改造に取り組んできた。ブラックバーンは2020年のPGAティーチャー・オブ・ザ・イヤーを獲得した優秀なコーチで、私は彼の勉強会に参加するなど親交があったため、ウィアーのスイング改造に関して話を聞いた。
「私はマイクが最も良かった、2003年のマスターズの状態に戻したいと思っています。ドローが打てるように、バックスイングをアップライトに上げ、ダウンスイングではシャローな軌道になるように指導をしています。」
ウィアーは以前から、打つ前のプレ・ショット・ルーティンで腰の高さまでクラブを上げていたが、最近ではその軌道が以前に比べてアップライトになっていた。ブラックバーンはアップライトなバックスイングをするために、ルーティンにも変更を加えたと語っていた。
■シニアのためにスイング改造
ウィアーのドミニオンチャリティクラシック最終日の戦いぶりをゴルフ専門チャンネルの解説としてじっくり見ていたが、優勝争いの緊迫した場面でもスイングは崩れることなく、スイング改造がうまくいっていると感じた。シニアツアーの参戦をきっかけに活躍を始める選手や、復活を遂げる選手もいる。ミケルソンがウィアーに対して「とても良いゴルフをしていた。すぐに勝利が訪れるだろう」とSNSに投稿していたように、ウィアーが再び勝利を手にする日は近いだろう。今年はウィアーやミケルソン、フューリック、アーニー・エルスといった大物がシニアに参戦した。来年以降も、大物が次々とシニアに参戦する見込みだ。きっと、ウィアーやミケルソンのようなライバルたちの第二幕の戦いを、もっと楽しめるようになるに違いない。
しかし、米シニアツアーを盛り上げてきたベテランも負けてはいない。現在賞金ランキングトップは、米シニアツアー41勝のベルンハルト・ランガー(63)だ。毎試合、優勝争いに常に顔を出し、ヘール・アーウィンの持つ45勝の最多勝利記録を更新する日も近いだろう。今週行われるチャンピオンズツアー最終戦、チャールズ・シュワブカップチャンピオンシップでどのような戦いが繰り広げられるか楽しみだ。
(ニッカンスポーツ・コム/吉田洋一郎の「日本人は知らない米PGAツアーティーチングの世界」)
◆吉田洋一郎(よしだ・ひろいちろう)北海道苫小牧市出身。2019年度ゴルフダイジェスト・レッスン・オブ・ザ・イヤー受賞。欧米のゴルフスイング理論に精通し、トーナメント解説、ゴルフ雑誌連載、書籍・コラム執筆などの活動を行う。欧米のゴルフ先進国にて、米PGAツアー選手を指導する100人以上のゴルフインストラクターから、心技体における最新理論を直接学び研究している。著書は合計12冊。書籍「驚異の反力打法」(ゴルフダイジェスト社)では地面反力の最新メソッドを紹介している。書籍の立ち読み機能をオフィシャルブログにて紹介中→ http://hiroichiro.com/blog/




