整った小顔、モデルのようなスタイル。清潔感。原英莉花(21=日本通運)は美人だ。ただ、取材をしていると、どうも今風の女子的じゃないものを感じる。

日本女子オープンに優勝した時、ギアチェックでボールにプリントされた言葉を見つけた。

「get the chance」

チャンスをつかむ-。原は「毎年、違う言葉をボールに書くんですが、今年はそれでいこうと」と言った。目標、戒め。昨年は「my way」だった。キャディーバッグなどに、その手のフレーズを入れるプロはいるが、ボールに名前、イラスト以外をプリントするプロは珍しい。

原の使用球はブリヂストン「ツアーB X」。同社のプロ担当に聞いた。

「世界一勝っているプロと、世界一飛ばすプロが使ってるボールです」。

ツアーB XSを使うウッズ、同Xを使うデシャンボーを引き合いに出し、うまいこと言ったその人が続けた。

「確かに珍しいです。ウチでは高木優奈さんが文字を入れていたと思いますが…。日本ツアーの女子プロで100人ほど使ってもらってますけど、他は思い当たりませんね」。同社の球を使う男子では宮里優作が「Go for it!」と入れているとか。目標に向け、努力する、頑張る、やりぬく-。

宮里の17年日本シリーズでのツアー初優勝は感動だった。かつての強豪アマがプロ転向苦節15年、最終日最終18番で決めたチップインVには、シビれた。まさに「Go for it!」ではないか。

原の「get the chance」を見て、瞬間的に思い出した。原の師匠ジャンボさんも確か-。1998年頃だったか。キャディーバッグの背にデザインされた言葉があった。

「Follow the Major」

メジャー優勝を追い求める-。訳せば、そんな感じか。タイガー・ウッズの登場でゴルフが変わり始めた頃、50歳過ぎのジャンボさんはやり残した思いを言葉にして、自分を奮い立たせていたのかもしれない。

言葉の解釈も独特だった。「運動」。辞書では、いや一般的にも「位置を変えて動くこと」「スポーツ」の意味だが、ジャンボさんに言わせたら、違った。

「運動ってのはな“動きを運ぶ”じゃねえんだ。“運を動かす”だ。運を動かすにはどうするんだ? それを考えろ」

田中秀道が駆け出しの頃「説教されちゃった」とうれしそうに教えてくれた。

言葉には力がある。座右の銘や教訓も日ごろから念じたり、口にすることで力になる。

古くさく、泥臭く、でも力強い。それこそが、原英莉花の魅力の本質かもしれない。【加藤裕一】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)