笹生優花の全米女子オープン優勝は日本時間6月7日だった。「畑岡奈紗とのプレーオフ」「世界一のタイトル」という特大ニュース、しかもまだ1週間少し前のことなのに、もうかなり前の出来事のような気がする。年をとったせいか、膨大な情報が氾濫する世の中のせいか。しかし、プロ仲間の感覚はきっと違う。

先週の宮里藍サントリー・レディースは「笹生効果」がビビッドに反映されたトーナメントだったと思う。28歳のプレーヤーズ委員長・青木の優勝、絶好調・稲見のV逸というトピックに隠れがちではあるけれど、山下美夢有、西郷真央の1打差2位はインパクトがあった。笹生と同じ01年度生まれ、新世紀世代の2人だ。

ティーショットを放つ山下美夢有(2021年6月13日撮影)
ティーショットを放つ山下美夢有(2021年6月13日撮影)

最終日の山下は、稲見と青木がいた最終組の2組前で回った。稲見との5打差を追いかけ、1番でおはようバーディー、3番でチップイン、6、7番はきっちりチャンスにつけて、前半8ホールで1打差にするチャージを見せた。

西郷は稲見との4打差を追い、最終組の1組前で回った。14番パー4は最奥のピン(フロントエッジから29ヤード、右から5ヤード)に、第2打で思い切り突っ込んだ。グリーン奥ラフにこぼしたが、織り込み済み。上りになる10ヤード弱のチップショットを放り込んだ。最終18番パー4は第2打をピン横60センチに突き刺し、バーディーフィニッシュした。

結果的に山下も西郷も、青木に1打及ばなかったものの、めちゃくちゃアグレッシブだったわけだ。

大会前、2人の笹生についてのコメントはこんな感じだった。

山下 感動しました。同級生で、日本では一緒に練ランもするユウカには刺激をもらってます。本当に頑張って、ついて行くしかない。自分のレベルをもっと見直さないといけない。(全米女子オープンは)そう考えた1週間でした。まだまだ私が下ですが、負けたくない。ライバルとしてやってるんで。

西郷 (全米の最終日は)朝起きて、プレーオフの前ぐらいからリアルタイムで見ました。(笹生だから見たわけでなく)私は男女とも海外メジャーを好んで見る方なんで。もちろん“頑張れ”と思ってました。笹生さんは一言で表現するなら「すごい」です。ただ、私自身が他人にあまり影響されないと言うか、自分のことを1番に考えると言うか…。

実際に質問して、答える姿を見た感触を言うならば、山下は実にストレートな物言いだった。「仲間に感じた熱」をそのまま口にするというか。一方の西郷はあえて冷静に、距離をとって答えていたように思えた。ある意味で「プロとしての自負」「負けん気の強さ」を感じた。

通算16アンダーでホールアウトする西郷真央(2021年6月13日撮影)
通算16アンダーでホールアウトする西郷真央(2021年6月13日撮影)

笹生の快挙に強い衝撃を受けたのは山下、それに原英莉花らか。西郷はそれほどは…と少なくも表面上は、そんなニュアンスだった。また国内志向の強い稲見萌寧、古江彩佳らはかなり平静に受け止めた。ただ、人それぞれ度合いは違っても、必ず何かを思ったはずだ。

03年ミヤギテレビ杯に高校生で勝った宮里藍に触発された世代の勝みなみが14年KKT杯バンテリンレディースで、畑岡奈紗が16年日本女子オープンでアマチュア優勝を飾った。19年AIG全英女子オープンの渋野日向子に続くように、笹生が全米女子オープンで勝った。日本女子ゴルフ界のレベルはこうしてまた1つ、上がっていくのだろう。【加藤裕一】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)