6月23日、女子ツアーのアース・モンダミンカップ第1日に起きた「キャディー途中交代騒動」。インスタートの17番パー4で、トラブルショットになった第2打以降の処置を巡り、選手と帯同キャディーの意見が合わず、選手が18番のティーグラウンドでそのキャディーに解雇を告げ、その選手のコーチが代役を務めることになった-。

現場におらんかったし、日本女子プロゴルフ協会が「調査中」を理由に当該選手、同組で回っていた選手らにかん口令を敷いているから、確たる真相はわからん。それでも、当事者を知る関係者を取材して、おおよその状況はわかった。

レベルの低さに、あきれた。

キャディーには数種類ある。コース所属のハウスキャディー、大会側が集めた学生らのバイトもいるが、今回のケースは「プロキャディー」だ。キャディー業務が職業で選手に雇われ、報酬を得る。他のキャディー以上に選手との主従関係がはっきりしている。

仕事はキャディーバッグを担ぐこと(最近は手引き電動カートを使うケースもある)に加え、ショットの残り距離の計算、風や、パットのライン読みなどもろもろだ。選手がプレー中に助言を求められる唯一の存在でもある。

選手とプロキャディーの契約は、選手から「今度お願い」とアプローチする場合と、キャディーが「担がせて」と売り込む場合がある。互いが納得すればコンビ結成となる。

プロキャディーにはいろんなタイプがいる。コースに関する情報を入手しておくのは当然として、選手の置かれた状況、心理を見極めて「今は言うべき」「ここは黙っとくべき」てな判断をした上で「積極的に進言する人」と「聞かれるまで言わん人」。性格的にはイケイケ、石橋をたたいて渡る慎重派、おしゃべりだったり、無口だったり…。

選手は選手で、どんどん意見を言ってほしい人、いらんことを言われたくない人がいる。自分にないものを補って欲しかったり、気持ち良くプレーさせてくれるだけでOKの人もいる。

プロだから互いにプライドがある。意見の対立もある。記者は96年秋から、中抜けしながら20年近くトーナメント現場を見てきたが、選手とキャディーが衝突し、決裂したケースはあっても、今回のように18ホールを完了せず、まして半分以上の10ホールも残してキャディーが途中交代した話は聞いた事がない。熱中症による体調不良や不測の事態が発生した場合を除いてだが。

両者に契約を結ぶ際の覚悟や、信頼関係がなかったのだろうか。

騒動の当該キャディーは某週刊誌の取材に「声を荒らげたりしてない」という趣旨の説明をした。一方的な言い分だが、そうかもしれん。ただ、自分を途中解雇せざるを得ん気持ちにさせたのは事実だろう。プレーに全責任を負う立場の「主」の心境を、そこまで乱した時点で「能力不足」と言われても仕方あるまい。

途中解雇を決めた選手が18番ティーグラウンドで泣いている動画を見た。確かに我慢ならんかったんかもしれん。それでも、結果的にでも、そんな空気を作ってしまうキャディーを誰が雇ったのか? 18ホール完了まで我慢できんかったんか? そこには「雇用者責任」があると思う。

騒動に巻き込まれた形の同組選手2人は嫌な思いをしたと思う。また一連のやりとりを見ていたギャラリーがいたら、不快に思うだろう。それはもう女子プロゴルフの品位を損なう行為にあたる。

ケンカするなら、周りに迷惑をかけんよう勝手に2人でやっとけって話だ。

どっちがどの程度悪いのか、9対1なのか、7対3なのか、5対5なのか。そこはわからない。ただ、完全に「加害者」と「被害者」にわかれることはない。キャディーもキャディーなら、選手も選手。プロとして、あまりにお粗末。それしかない。【加藤裕一】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)