「パー5のセカンドを打つのが世界一早い」。吉田優利がこう評するのが青木瀬令奈(29=リシャール・ミル)だ。昨年13回も同じ組で回った仲良しコンビ。92年度生まれで「最強アズマ軍団」を代表する青木と、00年度生まれの「ミレニアム世代」の吉田。年齢は離れているが、吉田が最も頼りにする先輩が青木だ。

身長153センチの青木は、ドライバーの平均飛距離が219・78ヤードで総合ランキングは96位。「自分は飛ばないから、セカンドはいつも最初に打つ。みんながつく前に打っちゃえという感じ」。吉田も「セレナさんはドライバーを打ったら、もう次(に打つ)のクラブを持っている」と笑うほどだ。

そんな青木のクラブセッティングも他の選手とは変わっている。ドライバーを含めウッド系が5本。ユーティリティー3本、アイアン2本(8番、9番)、ウエッジ2本(52度、58度)にパターという構成だ。「飛ばない選手なので、150ヤード以上が生命線。スプーンでピンをねらえるセッティングです」と言う。

そんな青木は、昨年の資生堂レディースで通算14アンダー、大会記録を2打更新するトーナメント記録をマークしてツアー3勝目を飾った。男子でいう選手会長にあたるプレーヤーズ委員長としての優勝でもあった。

青木は向上心のかたまり。大谷翔平をまねて始めたゴルフノートは、今や「懺悔(ざんげ)ノート」として、自分を鼓舞するために試合の日は毎日書いている。昨年オフからは休みをなくし、試合から試合への移動日でも会場近くのゴルフ場を予約しラウンドする。大好きだった宝塚の観劇も封印。美容室にもいかず、ただただゴルフに集中する修行僧のような生活を送っている。

そんな青木は、渋野日向子や吉田優利など若い選手から慕われている。「頼れるあねご肌の先輩」として吉田が挙げたのも青木だった。「大好きで、頼りになる先輩。プレーが早くてすごく回りやすい。初日とか、セレナさんと同組になれといつも祈っています。成績が良かったのはセレナさんのおかげ」。

青木の他にも、上田桃子のようにゴルフに向き合う姿勢や人柄で若い選手に慕われるベテランがいる。今年30歳になる青木だが、昨年同様、今年も活躍が期待される選手の1人だ。あるときは若者の目標になり、あるときは壁になるベテランがいることが、ゴルフ界をさらに盛り上げることになると思う。【桝田朗】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)

青木瀬令奈(2022年11月23日撮影)
青木瀬令奈(2022年11月23日撮影)