黄金世代の小祝さくら(22=ニトリ)が20-21年シーズン3勝目、ツアー通算4勝目を挙げた。強風の最終ラウンド(R)は首位と3打差3位から出て、自慢のショット力で3バーディー、1ボギー。この日のベストスコアタイ70で回り、通算10アンダーの206で逆転勝ち。同シーズン全52戦中17戦を終えて賞金は約1億314万円と大台を超え、賞金ランク1位に浮上。単純計算で3億円超えも可能なハイペースで賞金女王へ、突っ走る。

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混戦の優勝争いで、小祝が勝負に出た。首位グループを1打差で追う15番パー4。最終組の1組前で回り「みんなここはバーディーをとるだろうし」と思った。300ヤードと短いミドルが、この日はティーグラウンドが極端に前に出され、さらに短くなった。グリーン左前に広がるバンカー越えまで約230ヤード、ピンまで約240ヤード。風向きはフォローだった。

1オン狙いのドライバーショットはグリーン右のラフへ。20ヤードのアプローチをピン1メートルに寄せ、楽々とバーディー奪取。通算9アンダーで首位に並んだ。続く16番パー5で残り75ヤードの第3打をウエッジで3メートルにつけ、連続バーディーで単独首位に浮上した。

時に10メートル超の強風が向きを変えて吹き荒れた最終日、ベストスコアは小祝らの70止まりだった。難度を増したコースを制したカギは、ショット力にある。「私は球が高いんで、風が吹いた時用に低い球を練習してきた。成果が出たんじゃないかな」。ツアー初優勝を飾った19年から取り組んできた。アイアンを短く持ち、球を右に置いて、振り幅はスリークオーター。「手ではなく、下半身で切り返す」という。低弾道ショットを多用し、3バーディー、1ボギーと出入りが少なくスコアをまとめた。

技術を生かすのは“小祝ワールド”とも呼べるメンタリティー。この日の優勝でシーズン獲得賞金は1億円を突破したトッププロが、前日夜に小さな買い物を楽しんだ。LINE(メッセージアプリ)の250円のスタンプ。「意外と高いなっと思ったけど」。うさぎのデザインが欲しかった。最終18番で結果的にウイニングパットとなった2メートルを沈めたが、打つ前にずっとニコニコ笑っていた。「これ入れなきゃ、プレーオフかな」と分かっていたのに、緊張しない。「優勝争いだけでもうれしい。特に悪天候だったし、楽しまないと、と思って」。一般人と違う感性が、勝負どころの平常心につながる。

今季は20年14試合、21年38試合が統合され、52試合。賞金女王争いも高額となる。約3分の1の17戦終了時の大台突破は3億円超のハイペース。「まだ(今年)3試合が終わっただけなんで。気を引き締めていかなきゃ」。力まず、焦らず、小祝が笑った。【加藤裕一】

◆小祝(こいわい)さくら 1998年(平10)4月15日、北海道生まれ。母が宮里藍のファンだった影響で、8歳からゴルフを始める。14年北海道女子アマ選手権で優勝。17年プロテスト合格。18年新人賞と敢闘賞。19年サマンサタバサ・レディースで初優勝し、20年ゴルフ5レディースで2勝目。今年はダイキン・オーキッド・レディースに続く優勝。158センチ、58キロ。家族は母と弟。