首位から出た杉山知靖(28=レイクウッドコーポレーション)が通算19アンダー、265でツアー初優勝を果たした。

杉山は「素直にうれしいという気持ちと、ここまで応援してくださったみなさんに感謝しています。優勝という結果におごらず、感謝の気持ちを忘れずに精進していきたい」と喜びを語った。7月には国内下部ツアーにあたるAbemaTVツアーのプレーヤーズチャンピオンシップ・チャレンジで優勝。母子家庭育ちで、この日も当時と同じく女手ひとつで育ててくれた母智恵さん(57)へ「一番に報告したい」と話した。地元の神奈川を離れて高知の名門・明徳義塾高校へ進学するまでは苦労をかけたと振り返り「朝起きたら、朝食が作られていて、もう家にいなくて。学校から帰ってきてもまだいない。こんなに働かせていいのだろうかと思っていました。小さいころから何不自由なくゴルフをさせてもらって、心から感謝しています」。賞金2200万円は母へ贈ることも明かし「自分の遊びには使わずに、ためになるようなものに変えられたらいいなと思います」と話した。

下部ツアー優勝後、わずか約3カ月でレギュラーツアー優勝も手にした。転機となったのは所属する神奈川・レイクウッドGCのスタッフたちの激励だったという。7月の優勝まではレギュラーツアーで3大会連続予選落ちを喫するなど苦しんでいた。そんな最中の練習中もコース整備のスタッフから励まされていたといい「真夏でも寒い冬でも変わらずコースをきれいにしてくださっている。その人たちに『(設備を)存分に使っていいから。杉ちゃん頑張れよ』と声をかけてもらえるのはプロゴルファー冥利(みょうり)に尽きるなと。この時にスイッチが入りました」。勝利という最高の形での恩返しとなった。

今大会3位以内に与えられる日本開催の米ツアー大会、ZOZOチャンピオンシップ(10月21~24日、千葉・アコーディア・ゴルフ習志野CC)の出場権も手にした。同大会には高校の2学年先輩でもある松山英樹も出場する。「偉大な先輩なので、同じ土俵に立てるということだけでも、光栄に思います」と語り、「ストイックでゴルフに対して向き合う姿勢がとても参考になる、模範のような先輩でした。直接お会いすることもなかなかできない方なので(大会で)何かお話できたらいいなと思います」と話した。

最終日は杉山と3打差で2位発進の片岡尚之と最終組で伸ばし合う展開に。序盤から互いにバーディーを取り合っていたが、じりじりと差を詰められ、14番で通算17アンダーでいったんは追いつかれた。しかし、直後の15番で約2・5メートルを決めて再びリードを奪うと、16番パー5でも第3打で絶妙なアプローチをみせて約30センチにつけ、バーディー。リードを広げて逃げ切り、悲願の初勝利を手にした。【松尾幸之介】

◆杉山知靖(すぎやま・ともやす)1993年(平5)4月28日、神奈川県生まれ。ゴルフ好きの祖母の影響で5歳からクラブを握り、関東中学選手権春季大会2位。地元を離れ、高知・明徳義塾に進学。四国ジュニア、四国高校選手権優勝。中央学院大4年だった15年にプロ宣言。16年にプロテスト合格。21年7月には下部ツアーのプレーヤーズチャンピオンシップ・チャレンジを制し、プロ初のトーナメント優勝を果たした。173センチ、75キロ。

〈最終日に7つ伸ばして2位となった香妻〉(ZOZOチャンピオンシップ出場権も獲得し)狙っていたのでめちゃくちゃうれしい。どれだけ通用するか。全力で勝ちにいきたい。