絶対王者が日本勢を警戒!? 6、7日に開催される柔道のグランドスラム(GS)パリ大会を前に、地元フランスの英雄である男子100キロ超級で12年ロンドン五輪金メダルのテディ・リネール(26)が欠場を発表した。

 3日までにフランス連盟が肩の故障を理由とする発表を行ったが、昨年の世界選手権で7連覇を達成したビッグネーム攻略の糸口を探りたい日本柔道界にとっては、残念な一報となった。

 同大会のための4日に羽田空港に姿をみせた井上康生・男子日本代表監督(37)は、「残念ですけどね、想定内です。しょうがないかな」と割り切った。日本はリオデジャネイロ五輪代表選考で重要な大会と位置付け、世界選手権の決勝で2年連続リネールと対戦した七戸龍(27)と、国際大会6連勝中と勢いに乗る原沢久喜(23)が出場する。王者相手にどう戦うかも選考の重要要素になったはずだが、同監督は「次に持ち越しですね。リネールが出なかったことに安堵(あんど)感はないと思う。戦いたかったと思う。出なかった中でも、目の前の相手にどうぶつかっていくか、注目したい」と述べた。

 日本代表の鈴木桂治・重量級コーチは、リネールのことを「良い意味で臆病」と評したことがある。組み手でも自分が絶対的に有利にならない限りは、技をかけない。その慎重さが偉業を支えてきた。果たして畳み以外でも「臆病」かは不明、さらに肩の故障がどのような重さかも不明だが、見方によっては2人が出場する日本勢を警戒して、大事を取ったとも取れる。

 井上監督は「どうなのか分からないですけど、意識しないことはないと思う。五輪前に余計なリスクを背負いたくないというのはあるでしょうから」と口にした。近年の柔道界では映像分析が進歩している。日本勢と試合をすれば、研究されるのは必至。リオの本番を控えて、丸裸にされてはたまらない。地元の試合にもかかわらず欠場を決めた裏には、そんな事情があっても不思議ではない。

 話題の最後に井上監督はこう付け加えた。

 「対戦して良かった場合もあるし、対戦せずにやって吉と出る場合もあるし、これは分からないです。勝負の世界は生き物。されど、我々がやらなければならないのは、どういう状況になっても勝ちを呼び寄せる努力をしなくてはならないのは変わらない」。

 100キロ超級での金メダルを日本選手が手にした時こそが、日本柔道再建がなった時と言っても過言ではないだろう。残り6カ月。勝ちを呼ぶために1日も無駄にできない。