吉永一貴(18=愛知・名古屋経大市邨高)がショートトラック男子最年少となる五輪出場を確定させた。1500メートルで2位に入り、3つの選考会の総合ランキングで同種目1位が決定。五輪種目採用前に全日本選手権3連覇していた母美佳さん(旧姓・加藤、58)との悲願をかなえた。坂爪亮介(27=タカショー)は2大会連続、女子の菊池純礼(21=トヨタ自動車)は初の五輪を確定させた。日本の枠は男女各5人で最終日の今日17日に発表される。

 激闘を終えた吉永が、リンクの脇で照れくさそうに笑った。「レースの時は集中していたけれど、母のおかげで五輪に行けた。僕が出る五輪に連れて行けば、(出場していない五輪と比べ)変わった気持ちを味わえる。実現できて良かった」。平昌(ピョンチャン)五輪開会式時点の年齢は18歳6カ月9日。94年リレハンメル五輪の寺尾悟より9日早い、快挙付きの親孝行を素直に喜んだ。

 事実上の五輪を決めた1500メートル決勝は、残り半周で内側を抜かれて2位。母美佳さんは「あの子の悪い癖」と厳しかった。だが、夕方の500メートル決勝では残り1周の鐘を合図に、前の2人をまくって優勝。実力を証明した息子の五輪決定に「うれしい。ちょっと気が楽になりました」と母は胸をなで下ろした。

 「やるんだったら、中途半端はダメだよ」

 小学2年の11月に母と交わした約束を、吉永は守り続けてきた。地元の大会でショートトラックを見つめ、家に帰ると「やってみたい」と切り出した。美佳さんの妹で、吉永の叔母、美善さん(55)はスピードスケートで80年レークプラシッド五輪出場。そんな家系でもスケートを強制されなかった。

 中2だった14年1月には、ソチ五輪の代表合宿にサポートで参加。転倒した選手のスケート靴の刃が右の頬に刺さり、傷口がパックリと開いた。10針縫った息子に母は「顔で良かったね」。競技に影響が出る脚でなかったことを喜び、吉永も「全然平気」と笑った。

 今春からは母子で強豪国の韓国に住み込み、力を高めた。勝負にこだわる厳しさを学んだからこそ「結果を出す五輪にしたい」。そこに甘えはない。【松本航】

 ◆五輪への道 日本の出場枠は男女各5。5人の代表を個人種目と4人で行うリレー(男子5000メートル、女子3000メートル)に割り振る。個人種目の男子は1500メートルと1000メートルが3枠、500メートル2枠。女子は1500メートル3枠、1000メートル2枠、500メートル1枠を得ている。選考会は9月の全日本距離別選手権、W杯派遣選手選考競技会と今回の3大会。3大会の成績をポイント化し、各種目(1500メートル、1000メートル、500メートル)1位は代表決定。残りは全種目の総合ポイントなどで選出し、最後の1~2枠が強化部推薦になる。