日本のエース候補・黒後愛(20=東レ)が、世界選手権デビューを飾った。アルゼンチンとの開幕戦に先発出場し、持ち味のパワフルなスパイクに加えてサーブ、ブロックでも存在感を発揮。チーム2位タイの10得点で3-0のストレート勝利に貢献した。今年代表入りした強心臓ルーキーの活躍でメダル獲得へ好スタートの日本は、5戦全勝での2次リーグ進出へ今日30日、強敵オランダと対戦する。

黒後が宙に舞い、強打を相手コートにたたきつけるたびに客席がどよめいた。日本の将来を担うエース候補が、世界の舞台で躍動した。第1セット、セッター田代が最初にトスを上げたのが、背番号21の代表ルーキーだった。ライトからストレートに打ち込んで応える。レフトから、バックセンターからのスパイクで7点。ブロックで1点、そしてサービスエースも2本決めて計10得点で勝利に貢献した。

試合前、世界選手権3度目のベテラン荒木が黒後を気遣った。「大丈夫? 緊張してない?」。底抜けに明るい笑顔と一緒の返事はこうだった。「全然です。ヤバイくらい緊張してないです」。中田監督が「決して折れない心。ミスしても引きずらない」と評価する強心臓で、臆することなく世界デビュー戦を戦い抜いた。

向上心も旺盛だ。今春、初めて代表に招集されたが、5月からネーションズリーグで世界を転戦する中、サーブの威力不足を痛感。ネットすれすれの弾道から急激に揺れて沈むスピードに乗ったサーブを身につけた。8月のジャカルタ・アジア大会からはサーブレシーブを任されるようになったが、「今日は以前よりいいパスが返せたと思います」と守備力にも磨きをかけてきた。

「今日は足元の悪い中、たくさん応援にきていただいてありがとうございます。これからもよろしくお願いします」。試合直後のコートインタビューでは、ほぼ満員のファンにお礼のあいさつ。明るくて、タフで、パワフルな20歳が日本を引っ張っていく。【小堀泰男】

◆黒後愛(くろご・あい)1998年(平10)6月14日、宇都宮市生まれ。下北沢成徳高入学後、20年東京オリンピック強化選手に選ばれる。2、3年時に高校選手権(春高)連覇でともにMVP。3年時に全国総体優勝。日本ユース、ジュニア代表。17年に東レ入り。最高到達点は306センチ。180センチ、69キロ。血液型B。