【ケロウナ(カナダ)27日(日本時間28日)=佐々木隆史】グランプリ(GP)シリーズ第2戦のスケートカナダで自己ベストの322・59点で初優勝した男子の羽生結弦(24=ANA)が貪欲な姿勢で高みを目指す。一夜明け、エキシビションに参加。3本の4回転ジャンプを跳んで優勝した女子のトルソワ(ロシア)と一緒に練習するなど精力的だった。次戦はGPシリーズ第6戦のNHK杯(11月22日開幕・札幌)。王者は肉薄したネーサン・チェン(米国)の歴代合計最高点323・42点を塗り替える準備を進める。

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しっとりとしたギター音が館内に鳴り響いた。羽生はあの頃をほうふつとさせる、青色の長袖シャツに黒色のパンツ。金メダルを獲得した14年ソチ五輪のショートプログラム(SP)「パリの散歩道」を華麗に舞った。構成も当時と同じ。4回転トーループ、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を決め、ルッツとトーループの3回転連続ジャンプは、トーループが2回転に。それでも、繊細かつダイナミックなスケーティングで魅了した。

現在地を確認したかった。「今このトーループ1本の構成のショートをやったら、どのくらいできるのかという挑戦」。前夜に歴代合計最高点に肉薄する演技をしたばかり。にもかかわらず、早速自分の状態を探った。エキシビションとはいえ、吸収できるものはする。午前中に行われた練習中に、女子の15歳の4回転ジャンパー、トルソワに声をかけた。すると一緒に滑りはじめ、4回転トーループを同じタイミングでジャンプ。「トルソワは力で跳べるタイプ。体幹も強いし体のバネがすごくあるという感覚。回転に入るスピードも非常に速い」と分析。自分とは違うタイプと認識した上で「そういう強さをこれから高難度をやっていくにあたって、安定感をあげるために必要」と実感した。

「偏見とかではなく、男子よりも力が弱い中で、あれだけ4回転が跳べるのは魔法ではない。自分も線が細くて力を使わないで跳びたい信念がある。参考にしています」。女子選手の演技を動画などでも分析。参考にしているという。合計点が320点を超えたのは17年世界選手権以来。「自信を持って“自分は羽生結弦なんだ”って言い聞かせながら練習したい」。信じた先に、次戦NHK杯での歴代合計最高点が待つ。