競泳男子200メートル平泳ぎ前世界記録保持者の渡辺一平(23=トヨタ自動車)が16日、オンライン形式で取材に応じた。1年延期になった東京オリンピック(五輪)について「1年前の自分と、今の自分をみれば、今の自分の方に自信がある。目標は変わらず、世界記録で金メダルを、やれればいい」と話した。

コロナ禍による自粛期間中は約2カ月間、プールに入れなかった。「今、水泳を頑張っている人でその経験(2カ月プールに入らない)がある人は少ない。体力、筋力を戻す方法を知る人はいない。だから自分なりに考えること、柔軟に考えることが大事だなと思った」という。5月下旬に久しぶりにプールに入った際は、指導者なしの練習となった。「自分で自分の体じゃないみたいだった。今は少しずつ戻ってきた」。

指導を受ける奥野コーチからリモートでメニューをもらって、1人で泳ぐ日々が続いた。6月下旬に母校の早大で奥野コーチらと合流。泳ぎを見た奥野コーチに「一平、安心したよ。1人でやっていたんだな」と言われて「どれだけやっていたか、わかってもらえましたか」と返した。奥野コーチも「取り戻すのに時間はそんなにかからないなと思った」と振り返る。

スポーツについて考える時間もあった。ひと足先に無観客で再開したプロ野球を見て、感じるものがあった。「ニュースをやってもスポーツの話が出ない。でも野球が無観客で開催してニュースで結果を知ると、それを楽しみにみている自分がいる。これを水泳にも落とし込みたい。前向きなニュースが少ない中で、スポーツにはそういう力があるんじゃないか」と言う。

男子200メートル平泳ぎは、競泳種目の中で最もハイレベルと言われる。昨夏の世界選手権は、渡辺、チュプコフ(ロシア)ウィルソン(オーストラリア)が世界新を視野に入れて決勝に臨んだ。そしてラスト25メートルで3人が並ぶデッドヒートを展開。チュプコフが、渡辺の記録を0秒55更新する世界新2分6秒12で優勝している。渡辺は、五輪延期前から2分5秒台を目標に掲げていた。

「今年、2分5秒台は出せたと思います。チュプコフ、ウィルソンに勝てたかは別にして、自分の目標は達成できたと思う。ただ今はもっと強くなると感じている。2分5秒9とかではなく、その上を目指したい」ときっぱり言った。【益田一弘】