フィギュアスケート男子の20年ユース五輪(オリンピック)金メダリストで、今季からシニアに転向する鍵山優真(17=星槎国際高横浜2年)が11日までに、日刊スポーツのフィギュアスケート総合情報サイト「Figure365」の取材に応じた。

 

今週末の12、13日にKOSE新横浜スケートセンターで行われるアイスショー「ドリーム・オン・アイス(DreamsonIce2020GoforTomorrow)」に出演。フル規格のリンクで新たなショートプログラム(SP)とフリーのプログラムを披露する、いわば“今季初戦”を前に20-21年シーズンに懸ける思いを語った。

 

飛び級で出場した昨年末の全日本選手権で3位に入り、今年2月の4大陸選手権(韓国)に出場。そこでも銅メダルを獲得する快挙で日本スケート連盟(JSF)の特別強化選手に選ばれた。

 

「4大陸選手権に出場して、シニアの中で戦って、これからシニアの世界でも戦えると実感できたので、今季はシニアに上がることを決めました」

 

7月には大阪府内で行われた全日本シニア合宿に初参加。「やはりジュニアの時とは皆さんのオーラが違って、雰囲気とか『シニアだな』って、すごく感じる部分があって。本当に皆さん、何もかも本気でやってるので。僕も負けないように、もっともっと頑張らないといけないなと感じました」

 

昨季は4回転トーループを軸に躍進した。4大陸選手権を制した羽生結弦(25=ANA)から「優真の高さ、軸の強さを見習うことが僕らにもある」と高く評価されたジャンプ。今季は2本目の4回転としてサルコーを導入する。

 

今年に入ってから本格的な練習を開始。新型コロナウイルス感染が拡大し、緊急事態宣言が出された春こそ、氷に乗れず感覚を失いかけたが「だいぶ調子も上がってきたので、すごく自信がついてます」と練習では成功の連続。「やっぱり技の出来が見られてくる。出来が良ければ良いほど加点をもらえる中で、自信はあるので組み込みました」と、より高い基礎点と出来栄え点(GOE)を稼ぐ新たな武器だ。

 

さらに「今年の曲には入れないんですけど」と前置きした上で、4回転ループに挑戦していることも明らかにした。既に練習では着氷。「五輪を目指しているので、そこで勝つためには4回転が複数必要。今、頑張っている最中」と先も見据えている。そのモチベーションは親友が高めてくれる。「周りのライバルの存在が僕に一番やる気を与えてくれるので。4回転を3種類、4種類と降りている人がいるので。負けないように僕も頑張りたい」と。

 

ライバルの名は佐藤駿(16=埼玉栄高2年)。同学年の親友でもある。「小学生の時は1回も勝ったことがないんですけど」と認めるように、全日本ノービス選手権を4連覇した佐藤に対し、鍵山は日本一の経験がなかった。だが今は「やっと肩を並べて、勝ったり負けたり繰り返すくらいにはなった」。昨年の全日本ジュニア選手権は鍵山が優勝し、佐藤が準優勝と高いレベルで競い合っている。

 

国際舞台では、佐藤がジュニアグランプリ(GP)ファイナルを制覇すれば、鍵山がスイス・ローザンヌで行われたユース五輪で金メダルを獲得するなど世界でもトップを争う存在に。今季は佐藤もシニアに挑戦し、ドリーム・オン・アイスでも競演する。「これからも一緒に戦っていって、お互い、うまくなっていけたらいいなと思ってます」と鍵山。若き2人が恐れることなく突き上げていく。

 

ジャンプ同様、さらなる飛躍の助走も取り始めた。カナダ在住の振付師ローリー・ニコルさんに師事することも決定。元世界女王の浅田真央さんや同王者の高橋大輔、村主章枝さんや本田武史さん、ミシェル・クワンさん(米国)ら数多くのトップ選手を手掛けたコレオグラファーに、8月15日からリモートで指導してもらっている。

 

振り付けは、これまで長く佐藤操コーチに担当してもらっていたが、同コーチからニコルさんの指導を仰ぐことを提案された。

 

「操先生と話して『海外の振付師さんにも挑戦してみないか』と。コロナの影響で海外に行くことができないので、とりあえずショートプログラム(SP)はリモートで作ろうという話になりました」

 

SP曲は「Vocussion」で米国のチェリスト、ヨーヨー・マの名曲。これをニコルさんが担当する。フリー曲は「Lord of the Rings」になった。“指輪物語”の映画版ではなくミュージカル版を使用しており、こちらは佐藤コーチが振り付けを担当する。

 

いよいよ始まる20-21年は、22年北京五輪のプレシーズンだ。今季の全日本選手権(12月、長野)は来年3月の世界選手権(スウェーデン・ストックホルム)などの出場権が懸かり、来季の全日本は、前例通りであれば北京五輪の最終選考会になる。

 

「五輪は小学生の時からの夢でしたが、今は夢ではなくて目標。出るだけではなく、いい演技をして、自分の納得のいく試合にしたいなと。まずは、その予選の全日本選手権で表彰台に立たないといけないので、1試合ずつ丁寧に試合をこなしていきたい」

 

最後に「2022年の北京五輪に出場し、メダルを獲得することが目標です。目標に向かって全力を尽くしますので、応援よろしくお願いします」と抱負を語った鍵山。その第1歩となる、演技披露会の意味合いを持つ「ドリーム・オン・アイス」で新プログラムをお披露目。シニア初年度初の公式戦は10月の関東選手権(茨城・ひたちなか)を予定している。【木下淳】