男子60キロ級は五十嵐匠梧(新津工2年)が初優勝した。決勝は磯部遙哉(開志国際1年)に豪快な背負い投げを決め、一本勝ちした。男女全10階級のうち、ただ1人の公立校個人チャンピオン。新津工からは初の選手権県チャンプになった。全国選手権は3月19日(女子個人戦)、20日(男子個人戦)に東京・日本武道館で開かれる。

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試合開始からわずか22秒だった。組んだ瞬間に五十嵐は得意技をさく裂させた。磯部を担ぎ上げ、背負い投げを決めた。「相手より先に技をかけるつもりだった。今までやってきたことを出せた」。昨年11月のBSN杯県高校大会に続いての60キロ級制覇。公立校でただ1人の県覇者は新津工で初の大会優勝者という称号も手に入れた。

新津工が全国高校総体(インターハイ)に団体出場した96年の主将を務めた亀山和輝監督(41)は教え子で後輩の五十嵐をこう評した。「何事にも一生懸命、というタイプ」。大けがからも“一生懸命”に復活した。一昨年9月に左肩の靱帯(じんたい)損傷、筋断裂、脱臼と複雑に絡まる故障に見舞われながら半年のブランクを経て昨年3月に復帰した。コロナ禍で復帰後も練習はできなかったものの体幹トレーニングなどで体力強化。通常の練習に戻ったのは昨年6月だった。現1、2年生部員は8人と少数だけに濃い練習をこなしてきた。

部員の中に左組み手の選手はいないが、左で組んでもらって練習したこともある。その取り組みが功を奏した。決勝の相手・磯部の左組み手を苦にしなかった。攻め続けながらの45秒間乱取り×10本では劣勢からのラスト45秒など、状況を設定して取り組んだ。安田中時代の個人55キロ級で全中出場している全国大会経験者は高校では初の全国大会切符を手にした。「まだ改善点はある。2、3回戦は攻撃が遅かった」。大会前夜の15日にカツカレーを食べて試合に臨んだ五十嵐は、今度は全国選手権へ一生懸命に練習する。【涌井幹雄】