仙台大クリケット部の女子4選手が今春、そろって日本代表強化選手に選ばれた。

スポーツ科学研究科修士(大学院2年)の鹿野あかり(23)、今春卒業した同大臨時職員の小島彩花(22)、体育学科3年の小松沙菜(21)、同2年の岩崎桜奈(19)は、9月にサモアで開催されるW杯予選の日本代表入りを狙う。

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仙台大クリケット部は18年(平30)春、女子日本代表の選手育成を目指す日本クリケット協会の要望に応え、東北・北海道地区で初の大学クリケット部として発足。創設4年目の今年は男子の部員募集も開始し、将来の指導者育成も視野にして競技普及に努めている。創部時から関わる仲野隆士部長(60)は「4人が強化選手になって注目度も高まる。(国内では)新しいスポーツなので魅力を感じてくれれば」と後に続く人材に期待している。

創部メンバーの鹿野がコーチ兼任の若きレジェンドとしてチームを引っ張る。仲野部長は「肩も足腰も強く、キャッチングもバッティングもいい、不動のキャッチャー」と信頼する。開志学園(新潟)まで硬式野球を続け、女子プロ野球を目指していた。だが、女子野球部がない仙台大への進学で野球を断念。トライアスロンに転向したが、3年時に創部されたクリケット部の第1期生となり、同年、ウィケットキーパー(捕手)で初の日本代表入りを果たした。

大学4年時の19年にはW杯・東アジア太平洋予選(バツアツ共和国)や東アジアカップ(韓国)に出場し、国際大会で経験値を高めた。実績もあり4年連続の日本代表入りは濃厚。鹿野は「目指すところは一緒。(強化選手に)4人が選ばて同じモチベーションで練習できる。ボウラー(投手)が安心して投げられる大きな的になって東アジアで1位になりたい」と日本代表の主戦キーパーとして心意気を示した。

代表選考会初挑戦で強化選手となった後輩3人も続く。今春、新社会人になった小島は、大学2年に進級する前までソフトボール部に所属。右肩を痛めて退部したが、回復後の3年夏からクリケットを始めた。臨時職員として大学の看板も背負う小島は「守備が持ち味なので、力を出し切ってアピールしたい。挑戦しやすく誰にでもチャンスがある」とクリケットの魅力を語る。

昨秋入部した小松は陸上部だった岩手・久慈3年夏の東北高校総体1600メートルリレーで準決勝に進出。走力が求められるクリケットで快速をアピールする。大学入学後はアイスホッケー部も経験。好奇心旺盛な小松は「練習あるのみ。うまい人のまねをして吸収したい」と控えめだが、仲野部長は「向上心があり伸びしろがある」と太鼓判を押す。

その仲野部長が「原石を見つけた」と評価するのが岩崎だ。長町中では仙台南リトルシニアに在籍。鹿野同様、女子プロ野球を目指し、高校は創部初年度の札幌新陽に進学した。3年夏の選手権は5番内野手で全国4強。球速もあるだけに守備だけでなく、将来はボウラーとしての期待も高まる。岩崎は「守備範囲を広くして制球も磨いて確実にアウトを取りたい」と意欲を見せる。

3月の選考会で選ばれた日本代表女子強化20選手は強化合宿を重ね、8月までに日本代表14人に絞り込まれる予定だ。クリケットは1チーム11人構成。鹿野は「全員が選ばれるように頑張って大学でも単独チームで戦えるようにしたい」とアピールする。【佐々木雄高】

◆クリケット 1チーム11人で対戦する英国発祥の球技。2チームが交互に攻撃と守備を1回ずつ行う1イニング制、または2イニング制で総得点を争う。守備はボウラー(投手)、ウィケットキーパー(捕手)、ほかに9人のフィールダー(野手)で構成。攻撃は1~11番まで打順を決め、バッツマンとして2人ずつフィールドに立ち、ボウラーと対戦する打者をストライカー、反対側の走者をノンストライカーと呼ぶ。守備側が攻撃側から10アウトを取るか、規定投球数を投げ切るかで攻守交代になる。野球の原型になったといわれるがフィールドの形状は大きく異なり、得点パターンも多彩だ。世界ではサッカーに続く競技人口を持つ。

◆鹿野(かの)あかり 1997年(平9)11月25日、宮城・川崎町生まれ。

右投げ右打ち。富岡中では軟式野球部で、クラブチーム「宮城ドリームガールズ」にも在籍。開志学園(新潟)では女子硬式野球部に所属。内野手で1年春からレギュラー。2年春の高校選抜大会4強、3年夏の高校選手権8強。仙台大では2年時までトライアスロン部。3年時に創部されたクリケット部に入部。右投げ右打ち。祖父母、両親、兄、姉。154センチ、50キロ

◆小島彩花(こじま・あやか)1998年(平10)10月4日、福島市生まれ。北信中ではソフトボール部に所属。福島北では1年秋からレギュラー。内野手で2年春の県大会8強。仙台大ではソフトボール部に入部も、2年進級前に右肩を痛め、3年夏からクリケット部に転部。右投げ右打ち。祖父母、両親、弟、妹。156センチ、63キロ

◆小松沙菜(こまつ・さな)2000年(平12)4月27日、岩手・久慈市生まれ。長内中と久慈高では陸上部に所属。3年夏の東北高校総体1600メートルリレーで準決勝進出。仙台大入学後はアイスホッケー部に所属し、2年時の昨秋からクリケット部に転部。右投げ右打ち。祖父母、両親、姉、弟。154センチ、53キロ

◆岩崎桜奈(いわさき・はるな)2002年(平14)2月28日、仙台市生まれ。長町中では仙台南シニアに所属。札幌新陽・女子硬式野球部の創部メンバーで、内野手として3年夏の全国選手権4強。仙台大入学後は女子軟式野球のクラブチーム「メダリスト」に在籍。今春クリケット部に入部。右投げ右打ち。祖父母、両親、兄。165センチ、59キロ。