女子78キロ超級は18年世界女王の朝比奈沙羅(24=ビッグツリー)が決勝で20年全日本女子選手権覇者の冨田若春(わかば、24=コマツ)に反則勝ちを収め、2大会ぶり2度目の頂点に立った。試合後は膝を負傷した冨田を背負って、畳に深々と一礼する姿が大きな感動を呼んだ。男子100キロ超級は初出場の影浦心(25=日本中央競馬会)が優勝。最重量級では03年の棟田康幸以来、12大会ぶりに日本勢が制した。

王座奪還を目指した朝比奈は、冨田に強烈な圧力をかけた。途中、何度も腕がしびれたが「最後は気持ち」と自身を発奮させて制した。延長5分36秒、指導3で下した。試合中に左膝を負傷した冨田は歩行困難となり、朝比奈はすぐに駆け寄って自ら背負い、そのまま一緒に一礼して畳を下りた。観客からは盛大な拍手が送られた。国際柔道連盟のウェブページにも、おんぶした写真とともにその様子が伝えられ「金メダリストの優しさ」「世界女王を体現する素晴らしいスポーツマンシップ」などの賛辞が贈られた。

独協医大の医学生と柔道家の二足のわらじを履く24歳は「おぶったのが正しい選択かは分からないが、一緒に畳に礼をして出るのは相手として必要最低限やることだと思った」と説明。負傷した冨田は全日本柔道連盟を通じて「朝比奈選手にはとても感謝している」と謝意を伝えた。

○…影浦が大仕事を果たし「(井上)監督に金メダルを掛けられ、本当に誇らしい」と悦に入った。昨年2月にリネールの連勝を154で止め、一躍脚光を浴びた。だが主要国際大会での実績が足りず、東京オリンピック(五輪)代表は落選。「リネール選手に勝ったことばかり注目されるが、今度は世界王者のことを話題にしてもらいたい」。インタビューにプライドをにじませた影浦。3年後の主役へ、確かな1歩を刻んだ。