全日本柔道連盟(全柔連)の山下泰裕会長(64)が、世界選手権女子78キロ超級で金メダルを獲得した朝比奈沙羅(24=ビッグツリー)の決勝後の行動をたたえた。

14日、オンラインでの理事会後の記者会見で国際柔道連盟(IJF)理事も務める同氏は「柔道は教育的な価値が非常に高い。いくら王者であっても相手へのリスペクトを失った態度は絶対に許されない。日本代表選手がああいった場で、自然に出た行為かと思うが、勝った負けただけでない柔道の素晴らしさを伝えてくれた。朝比奈選手も医学の道との両立で十分な準備ができず、不本意な結果や試合に出られなかったりしていたが、その思いを今回の大会でぶつけてくれた。日本のトップ選手が、示してくれたこの態度や姿勢はこれからも大事にしていきたい」と話した。

朝比奈は決勝で20年全日本女子選手権覇者の冨田若春(わかば、24=コマツ)に延長の末、指導3の反則勝ちを収め、2大会ぶりの王座奪還を果たした。試合後は左膝を負傷した冨田のもとに駆け寄り、おんぶして畳へ深々と一礼。日の丸を背負う勝者と敗者が一緒なって会場を去る姿が大きな感動を呼んだ。

昨春に独協医大医学部に入学し、医学生と柔道家の二足のわらじを履く。勉強と競技の両立に励むが、昨年12月の全日本女子選手権では初戦の2回戦で高校生に敗退。今年4月の全日本選抜体重別選手権は肋骨(ろっこつ)骨折により欠場した。東京五輪代表補欠でもあり、全柔連の強化委員会から稽古不足を懸念する厳しい声なども出た。一部から批判されているのも承知の上で「闘う医学生」は、「全て結果で見返す」との強い覚悟を持って4度目の世界選手権に臨んだ。

東京五輪開幕が1カ月後に迫る中、勝敗以上にそのスポーツマンシップが象徴される名場面となった。