「パリの星」が高校生での世界一に挑む。レスリングの世界選手権は10月2日にノルウェー・オスロで開幕する。新型コロナウイルスの影響で東京五輪開催が1年延期したことで、五輪年、しかも閉幕からわずか2カ月での開催を迎える。
五輪で金メダル4個を量産した女子の日本勢は出場しない。代わりに、3年後のパリ大会を目指す選手にとっては、長く険しくなることが予想される国内の代表争いにおいて、まずは「世界一」の称号を手にしたいところ。その最注目が女子53キロ級の藤波朱里(17)。三重県のいなべ総合学園高3年のホープは、全国少年少女選手権4度優勝と小学生時代から脚光を浴びた存在で、18年には世界カデット選手権も制した。昨年末の全日本選手権、今年6月の全日本選抜選手権を制し、国内外で79連勝中。満を持してシニア世代の世界選手権デビューを果たす。
「いまはワクワクしています」。最終合宿を張る都内のナショナルトレーニングセンターからオンラインで取材に応じた顔には、自然と笑みが浮かんでいた。普段から試合前に緊張することはなく、「体力、筋肉も鍛えてきた。そこも注目して下さい」と声も弾む。
東京五輪は当然見ていた。「みなさんいっぱい金メダルをとってすごいな。自分も3年後にこうなりたい」。現実感が増した目標に高揚もあるだろう。ただ、その後に続けたひと言が、精神面の強さを感じさせた。
「53キロ級は向田(真優)選手が金メダルを取りましたが」。そう話を向けられると、こう答えた。
「国内にオリンピックチャンピオンがいる。逆にチャンスだなと思います。国内に世界で一番強い人がいる。倒していきたい」。
ひるむのではなく、むしろ好機と捉えていた。同じ三重県生まれの先輩でもある。幼少期からの意識もあるだろう。超えなければいけない壁と、金メダリストになる前から考えていたのかも知れない。その人に勝てば、金メダルが近づく。ターゲットがより明確になった。「まだまだ、まだまだ」と「まだ」を4回重ねるくらい、いまは勝てるかについては謙遜もあるが、「チャンス」と言い切った心持ちは強かった。
来春には日体大に進学する予定。02年の伊調馨、18年の須崎優衣に並ぶ3人目の女子高生の世界王者の経歴を持って進学し、パリへの道をまい進してみせる。


