フィギュアスケート男子で冬季五輪2連覇の羽生結弦(26=ANA)が、今季初戦の予定だったグランプリ(GP)シリーズ第4戦NHK杯(12~14日、東京・代々木第1体育館)を欠場することが4日、決まった。

日本スケート連盟によると練習中に負傷したといい、診断は「右足関節靱帯(じんたい)損傷」。古傷で復帰時期は未定だが、2戦の獲得ポイントで争う来月のGPファイナル(大阪)進出は絶望的となった。

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3連覇が懸かる22年北京五輪の開幕まで、ちょうど3カ月。まだ目指すか明言していないが、4年に1度のシーズン初戦を前に届いた羽生の近況は負傷だった。

日本連盟を通じ「たった1度の転倒で、けがをしてしまい、とても悔しく思っています」。世界初の成功を夢見るクワッドアクセル(4回転半)に国際スケート連盟(ISU)公認大会で初めて挑む期待が膨らんでいたが、持ち越しとなった。

右足関節靱帯損傷。過去5季で3度目となる右足首の古傷で「ほんの少しの衝撃でも、すぐ捻挫になってしまう」「弱い」「もろい」と18年に語ったことがある部位だった。国内で調整を続ける中、今回転倒して直接故障に結びついたジャンプは明らかにしていないものの、着氷する右足にかかる負担は4回転半の練習で確実に増していた。今年3月に「痛む部分、ダメージは確実にたまっている」と説明。4月には跳んだ回数が1000回を超えた。この日「ここまで最善の方法を探し、考えながら練習してこられた」と見せた自信が、無念さを物語った。

第6戦ロシア杯(26~28日、ソチ)も出場登録しているが、状況は不透明。GPファイナル(12月9~12日、東和薬品RACTABドーム)進出は絶望的だ。決断は先だとしても北京五輪への影響も懸念される。4年前も同じ右足首の大けがでNHK杯を欠場。ぶっつけ本番の平昌五輪では2連覇を遂げたが、また五輪シーズンに試練が訪れた。

それでも本人は前を向いている。「今回のけがからもまた何かを得られるよう考えて、できることに全力で取り組みます。今は少しでも早く氷上に立つことを目指し、痛みをコントロールしながら氷上でのリハビリをし、競技レベルに戻るまでの期間をなるべく短くできるように努力していきます」。最終目標と語る4回転半の着氷へ、まずは復帰を優先する。【木下淳】

◆羽生のGPシリーズ負傷欠場

初参戦した10-11年シーズン以降で2試合ある。最初は17年NHK杯。公式練習中に4回転ルッツを試みて転倒し「右足関節外側靱帯損傷」で欠場し、ぶっつけ本番の平昌五輪で2連覇した。

2度目は18年GPファイナル。フィンランド大会とロシア杯を2連勝して進出を決めたが、そのロシア杯で右足首を痛めながら強行出場した代償で辞退した。当時の診断は右足関節外側靱帯と三角靱帯損傷、右腓骨(ひこつ)筋腱(けん)部損傷だった。

昨年は初めてエントリーせず。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、自身の感染予防や人流抑制の観点から全戦欠場を8月に決断した。その後、年末の全日本選手権と今年3月の世界選手権には出場した。

◆フィギュアスケート北京五輪代表選考 シングルは男女ともに最大3枠を確保しており(1)全日本選手権(12月)優勝者が1人目(2)全日本2、3位、GPファイナル出場者上位2名、全日本終了時点の国際スケート連盟(ISU)シーズンベストスコア上位3名、の中から2人目(3)最後に(2)で漏れた中からISU世界ランキング等を総合的に判断して3人目を決める。羽生は最新世界ランク2位で日本勢最上位。全日本出場は原則必須だが、過去に世界選手権3位以内など実績を持つ選手が、けが等でやむなく参加できない場合の救済措置もある。羽生は世界選手V2回、直近は3位。