帝京大のプロップ細木康太郎主将(4年)が、頼もしい背中で勝利に導いた。

関西王者の京産大相手に、前半は10-23と大苦戦。故障明けの主将が投入されたのは、岩出雅之監督が想定していた残り5分ではなく、後半20分だった。「みんなも『ここからが勝負』となっていた。『勝てる』と思って最初のスクラムに臨んだ」。敵陣でのスクラムを何度も押し、相手はたまらず反則を繰り返した。同点の後半38分にWTBツイナカウヴァドラが決勝トライを挙げ、勝利を決定付けた。

主将を担い、発言に力が宿った。2年生NO8奥井は「この試合だけじゃなく、1年間先頭に立ち続けてくれた安心感がある」と明かす。「勝ちたい」-。その4文字で全員が前を向く。奥井はかねて「細木さんの言葉は、より一層『勝ちたい』となる」と言った。

理由がある。130人を超える部員へと語りかける日常的な場面。岩出監督からは「俺から伝えた方がいい時は言ってくれ。(言葉を)軽く使うな」と促されてきた。何を伝えるか迷った日、細木は気後れすることなく「もう少し時間をください」と発言をやめる。いつ、どの言葉を、どんなニュアンスで伝えるのか-。右プロップとして最前線で体を張りながら、頭も毎日、フル回転させてきた。

前人未到の9連覇以来となる決勝。岩出監督から「細木のキャプテンシーはチームをたくましくしてくれている。それに尽きる」と評され、主将は誓った。「明治だから、と考えることはない。積み上げてきたものにプライドを持ち、全てを出すだけです」。覚悟は決まっている。【松本航】